今や従来型の携帯電話は「ガラパゴス携帯」と揶揄され、スマートフォンへ乗り換える人が、ここ数年で急速に増えている。昨年は日本だけでも、3000万台も出荷されているという過熱ぶりだ。ところが、そのスマートフォンすらも、今後数年の内に過去の遺物になり兼ねない、新たなうねりが起こり始めている。そのうねりとは、身につけて持ち歩くことが可能な「ウェアラブル端末」の登場だ。
空前のスマートフォンブームを牽引してきた、アップルとグーグル。しかしその2大勢力自身がそれぞれ、スマートフォンの次なる形として、より便利でスマートな「ウェアラブル端末」の形状を模索してきた。そしてついに、アップルは「腕時計型」、グーグルは「メガネ型」の端末を開発し、すでに製品化の段階にまでこぎつけているというのだ。
とはいえ、実はウェアラブル端末は、これまでに全く無かったというわけではない。例えば、グーグルが開発しているというメガネ型でいえば、すでに2011年にエプソンが発売したヘッドマウントディスプレー「モベリオ」がある。世界初のスタンドアローン型シースルーモバイルビューアー・モベリオには、OSとしてAndroidが搭載されており、動画視聴だけでなくWEBサイトへのアクセスも可能だ。
さらには、JVCケンウッドのWi-Fi対応ハイビジョンメモリームービー「エブリオ」のモニタリング機能に対応しており、Wi-Fiネットワークを通して、遠隔でのビデオカメラの録画操作もできる。「モベリオ」がウェアラブル端末の草分け的存在であり、しかも興味深い製品であるのは間違いないが、スマートフォンに変わるものかといえば、そういうものではない。
また、腕時計型もすでに、ソニーがエクスペリアを遠隔操作できる「SmartWatch MN2」を発売している。これは、Android OSのスマートフォン、エクスペリアを同期させておくことで、腕時計型の端末から着信やメールの確認、SNSなどのチェックや投稿、ツイートが行なえるもの。さらにエクスペリアのミュージックプレイヤーと連携することで、音楽の再生や音量調節などの操作が手元で可能になる。しかし、こちらもあくまでエクスペリアの拡張デバイス的なものであり、スマートフォンあっての製品だ。
その点、現在開発中と噂されるアップルのスマートウォッチ「iWatch」は、iPhoneやiPadと同じOS「iOS」が搭載されるとみられているうえ、音声サポートシステム「Siri」を使って操作することで、腕時計のディスプレイのような小さなものでも、単体でスマートフォン並みのことができる可能性があるといわれている。また、デザインの方も、曲面ガラスを採用してアップルらしい洗練されたフォルムになると予想されている。
グーグルの「Glass」にいたっては、今年中にも製品版の販売が濃厚になっており、いよいよ「ウェアラブル端末」の時代が到来しそうな雰囲気になってきた。しかし、期待が高まる一方で、これらが果たして携帯電話やスマートフォンのような広がりをみせるのか疑問視する声も少なくない。ポケットに入るスマートフォンのほうが気軽に使えるし、何よりも画面が大きくて見やすく、扱いやすい。また「身につけていない」ことによる利点もあるというのだ。
いずれにせよ、もうスマートフォンの先にあるスマートデバイスが模索され始めていることだけは確かであり、今年2013年は、その大きな変革の年になりそうだ。(編集担当:樋口隆)