進化する教室、教育現場にもデジタル化の波

2013年04月22日 12:22

 近年、小中学校のデジタル教育化が加速している。今や学校にパソコンがあるのは当たり前。教室に電子黒板があるのも、決して珍しい光景ではなくなった。全国の小学校から高校までの公立学校を対象に、2012年3月に文部科学省がまとめた「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、電子黒板を使っている公立学校は72.5%、デジタル教科書は22.6%となっている。情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)への対応は、次代を担う子どもたちにとって不可欠であるとともに、日本の将来を左右する国家規模の課題でもあるのだ。

 総務省は2010年度から、文部科学省と連携して「フューチャースクール推進事業」という取り組みを行っている。これは、まず小学校10校、中学校8校、特別支援学校2校をモデルケースとして実証実験が行なわれたもので、該当校のすべての教室に電子黒板や無線LANを完備して環境を整えるのはもちろん、担任教員と生徒の一人ひとりにタブレットパソコンを一台ずつ支給し、効果を検証した。その結果、教員と生徒のICT活用能力が大幅に向上したという。

 地方によっては、自治体単位で積極的にICT対応を進めているケースも多い。例えば先日、佐賀市教育委員会は、新年度から3カ年の年月と9億円の事業費をかけて、市立の全ての小中学校に電子黒板を整備することを発表している。タブレットなども便利で活用性は高いが、生徒とのインターフェイスとして便利なのは電子黒板だろう。市教委によると、これまでモデル校として導入した4つの小学校と1つの中学校での「学力向上に役立った」との結果を踏まえ、教師からも「市の学校全体に整備をしてほしい」との声が上がったことも背景にある。また、機器を充実させるだけでなく、それを現場で取り扱い、指導する立場の教師の活用能力を向上させる必要性から、学校教育課内に新たに「ICT利活用教育係」を設ける、ICT支援員を5校に1人の割合で配置し、各校を週1回程度、巡回する方針だ。

 佐賀だけでなく、今後はこういった取り組みが活発になってくることだろう。それを見越してか、パナソニック や日立ソリューションズ、シャープ などをはじめとする各電機メーカーも、より活用しやすい電子黒板の開発に力を注いでいる。近い将来、日本の小中学校の教壇から、普通の黒板が消えてしまう日が来るかもしれない。

 授業のデジタル化に向けて、急がれるソフト面の充実

 一方、教科書をはじめとする出版事業等を営む東京書籍と、日本マイクロソフトは小・中・高等学校へのデジタルデバイスとICT利活用推進に向けて協業し、2社の提供する教育ソリューションを地方自治体や教育委員会、教育機関に訴求していくことを3月29日に発表した。また、これに伴って、まず具体的な取り組みとして、東京書籍は今夏をめどにWindows8用の学校生活支援アプリ「スクールパレット」をWindowsストア上で無償公開することを明らかにしており、5月下旬にもベータ版を公開し、7月下旬には正式リリースを行なう見通しを立てている。

 スクールパレットは、児童や生徒にとっては時間割やデジタル教科書などに利用できる教材プラットフォームとして、また教員に向けては、週案や時数管理などの校務に役立つ機能も多数備えられているという。また、自社のコンテンツを配信するだけではなく、同業他社及び各種メディアとも連携を行い、コンテンツの充実とスクールパレットの普及を図る。ちなみに協業発表時点では朝日新聞社や朝日学生新聞社、学研ホールディングス などが提携パートナーとなっている。

 一方、日本マイクロソフト側では、教育コンテンツのデジタル化やクラウド経由の配信、アプリ開発のための技術支援を行っていくという。教育現場のデジタル化に向けて、関連しそうなメーカーはすでに水面下で静かな覇権争いを繰り広げているようだ。(編集担当:藤原伊織)