NYダウは利益確定売りで22ドル安と3日ぶり反落。NY外為市場で日本時間の午前3時頃ついに1ドル=100円にタッチし、しかも安定的に乗せた。引き金はアメリカの新規失業保険申請件数の予想外の減少で、雇用統計の改善がフロックではないと確認されて安心感がひろがりドルが買われた。ドル円の3ケタは4年1ヵ月ぶり。10日朝方の為替レートはドル円が100円台後半、ユーロ円が131円台前半と、円安が大きく進行した。
為替の「ガラスの天井」が割れアク抜けの急騰が予想された日経平均は257.76円高、14449.24円の始値がつき、マイナーSQ算出日で約640社の決算発表ラッシュでもある10日の取引が始まった。3分後には14500円の大台に乗せ、20分後にSQ推定値14601.95円が出た。ドル円の100円突破サプライズのおかげでSQ値もあっさり14500円をクリアし101円のおつりがきた。ドル円は101円も突破する勢いで、日経平均は14600円台にタッチして「まぼろしのSQ」を消す。前場はおおむね14500円台の高値もみあいだったが後場は14600円をはさんで一進一退となり、最後は416.06円高の14607.54円と14600円台に乗せて、アメリカ雇用統計の劇的改善と1ドル=101円の円安で日経平均が913.50円上昇した今週の取引を終えた。TOPIXも+28.77の1210.60で終値1200台。SQ算出日なので売買高は44億株、売買代金は3兆9592億円と膨らんだ。
値上がり銘柄数は1160で東証1部の約3分の2を占め、騰落率のマイナスは医薬品1業種のみ。プラスの上位は精密機器、輸送用機器、証券、保険、非鉄金属、不動産などで、プラスの下位はその他製品、水産・農林、サービス、空運、建設などだった。
ファーストリテイリング<9983>は1050円高、ソフトバンク<9984>は340円高で売買代金1位になり両銘柄で日経平均を82円押し上げ、504円高のトレンドマイクロ<4704>が20円寄与したのが目立っていた。
ドル円が前日から2円を超える大幅な円安で輸出関連銘柄は一斉に買われ、特に自動車は大幅高、年初来高値更新銘柄が続出した。売買代金ランキングでは3位に290円高で5年ぶりの終値6000円台のトヨタ<7203>、5位に24円高で売買高1位のマツダ<7261>、13位に219円高の富士重工<7270>が入り、6円高の三菱自動車<7211>も売買高ランキング6位に入った。ホンダ<7267>は125円高、スズキ<7269>は195円高。電気機器も5000人を追加削減し2016年度に最終黒字800~900億円達成という中期経営計画の内容の一部が報じられたシャープ<6753>が27円高で売買高2位、売買代金6位。決算発表明けのソニー<6758>が43円高で売買高13位、売買代金8位で、いずれも年初来高値を更新した。5円高の東芝<6502>も売買高11位、売買代金14位と買いを集めた。決算内容がよかった産業用ランプのウシオ電機<6925>は一時ストップ高の293円高で年初来高値を更新し値上がり率2位。電子部品のミツミ電機<6767>も今期の黒字化と復配が好感されて100円高のストップ高比例配分になり、年初来高値を更新して値上がり率8位に入った。
午後、債券先物市場が乱高下し東証はサーキットブレーカーを発動したが、株式市場は国債を大量に保有する銀行株の一部が下落しただけで大勢に影響なし。メガバンクはみずほ<8411>4円高、三菱UFJ<8306>17円高、三井住友FG<8316>90円高と上昇したが、それ以上に好調だったのが証券で野村HD<8604>は37円高、大和証券G<8601>は56円高で年初来高値更新。その他金融のアイフル<8515>も159円の大幅高だった。不動産関連銘柄も快調で住友不動産<8830>は190円高、三井不動産<8801>は235円高だった。
全面高の中での下落組の代表が武田<4502>で、前日の決算発表では前期営業利益54%減。今期の見通しも最終利益28%減とさえず市場予測を下回り、取引開始時点から売り気配で売買代金9位と売り浴びせられ終値は315円安。唯一のマイナスセクター医薬品は塩野義<4507>が54円安、田辺三菱製薬<4508>が19円安、エーザイ<4523>が値動きなし。新興市場のバイオ関連も軟調で宝HD<2531>も70円安だった。ゲーム関連は、DeNA<2432>は前期最終利益46%増でも1~3月期の営業利益75倍のガンホー<3765>とはまるで勝負にならず414円安で値下がり率2位になり、グリー<3632>も74円安と元気なし。6月に再び株式分割を行うと発表したガンホーはストップ高でトップ同士〃兄弟会社〃のソフトバンクの株価にも好影響を与えている。ヤマダ電機<9831>は決算の前期の最終利益が61.9%減で今期の収益回復見通しも疑問視され385円安で値下がり率8位になった。
この日の主役はニコン<7731>。取引開始前から買い注文が盛り上がり、気配値を切り上げてもなかなか値がつかず、SQ推定値の算出を「ニコン待ち」で20分待たせる大物ぶり。終始高値圏で推移し、終値は318円高で値上がり率16位に入った。日経平均寄与度は+12円で5位。前日の決算発表では円安とデジタル一眼レフの販売が回復して在庫調整が進むと見込んで営業利益67%増、経常利益76%増とV字回復を遂げ、10円増配という今期見通しが出ていた。増益で予想PER(株価収益率)が23.0倍から13.5倍に急減し、前日終値2182円に割安感が出たため投資家の人気を呼んだ。予想PERは日本では時価総額を企業が発表する最終利益(純利益)見通しで割って計算するので、決算発表を境に激変することがある。(編集担当:寺尾淳)