シェールガス革命がもたらすもの

2013年05月17日 18:35

 輸入していた天然ガスすべての自国での調達が可能になったという「シェールガス革命」。これで余剰となったシェールガスの対日輸出が実現しそうである。自由貿易協定(FTA)を結んでいない日本への輸出は「公的利益に見合う」場合に限られてきたため、米国エネルギー省(DOE)の認可が必要であった。シェールガスの掘削が始まったころから、出資、および技術的な協力を行ってきた住友商事(8053)や三菱商事(8058)などの日本の商社の努力が実を結んだともいえるだろう。

 米国から輸入されるシェールガスの価格は、現在、日本が輸入している天然ガスの3分の2の価格になると試算されている。原子力発電所の稼働停止により天然ガス火力発電が増えている日本にとって朗報である。日本での天然ガス購入価格は日本向け原油平均価格にリンクしているため、米国や欧州の購入価格に比較するとかなりの高値で取引されている。天然ガスの特徴は熱量が大きいことから発電コストが他の燃料に比較し安いことと、CO2排出量が石油や石炭に比べて少ないことだ。

 今、日本に輸入されている天然ガスは貯留された砂岩から自噴する在来型天然ガスである。一方、シェールガスは硬い岩盤を持つ頁岩(シェール)に閉じ込められた非在来型天然ガスで、今世紀の初めに米国を中心に採算のとれる採取が可能になった。また、世界中のどこにでも存在し、資源量として在来型天然ガスの5倍以上とされている。

 頁岩の岩盤に閉じ込められたシェールガスは、地中深く2000から3000メートルにあり、その採掘には技術的な壁があった。2000年代に入り、水平掘削、水圧破砕などの技術が米国で開発され、シェールガスの効率的な採掘が可能になった。

 そのシェールガスの生産には大量の水を地中深部に注入することから地下水や河川の汚染、水圧破砕に伴う地盤沈下、またシェールガスの回収率を高めるために添加する化学物質の人体への影響などが懸念される。

 シェールガスの採取による環境問題はまだ報告されていないが、過去には資源の探鉱・開発、製錬などで環境汚染を引き起こしている事実がある。希望の持てる社会を持続させるためにも同じ過ちを繰り返さないように「シェールガス革命」に留意しなければならない。(編集担当:西山喜代司)