DNPが重要文化財のデジタル再製画を制作

2009年10月30日 11:00

 大日本印刷 <7912> は、和歌山県の綿江山無量寺が所蔵・保存している円山応拳と弟子の長沢芦雪による障壁画のデジタル再製画の製作を行った。

 国指定重要文化財に指定されている無量寺の障壁画は、1786年に円山応拳と永沢芦雪の2人によって描かれた貴重な文化財のひとつである。今回これらが保存・公開されている境内の応拳芦雪館が開館50周年を迎えることを機に、美術史家である辻惟雄氏の監修のもとデジタル再製画の制作が決定。国内有数の印刷会社のひとつである大日本印刷が約2年を要し55面の障壁画を完成させた。

 制作は、非接触型高精細スキャナーや銀塩カメラを使用し、質感や細部にわたって画像データを取り込むところからスタート。原本に忠実な色調を再現するため、専用のカラーチャートの作成し、カラーマネジメントやカラーマッチングシステムを開発・導入するなど、辻氏や関係者を交えた細やかな色合いの確認作業を行った。そして、印刷時には、独自で開発した、約100年と耐久性に優れた特漉き和紙を用いた。仕上がったデジタル再製画は、描かれた当時の質感や面影がそのまま描き出されており、方丈に納められることでその繊細な絵画空間を感じられる作品となっている。

 同社は既にデジタル再製画技術「伝匠美」の取り組みを開始し、従来不可能とされていた、金箔上への印刷や天井画・杉戸絵などの木材への印刷も成功。今後も様々なデジタル再製に取り組んでいく姿勢だ。
(編集担当:山下紗季)