原子力規制委員会(田中俊一委員長)は、福井県にある「高速増殖炉もんじゅ」の試運転再開に向けた、準備作業の中止を突きつけた。調査の結果、事業体である、日本原子力開発機構(JAEA)に対し、1万個近い機器の点検漏れが発覚「安全文化が著しく劣化している」痛烈に批判した。
これで核燃料サイクルの中核施設になる予定だったが、年内再開も危うくなり、核燃料サイクル実現は遠のくばかりだ。
「こういう組織の存続を許していることが問題だ」(規制委島崎邦彦委員長代理)とJAEAを厳しく非難する。また規制委田中俊一委員長も「安全に対する根本的な考え方をはき違えている」と痛烈に批判している。
報告書によると、機器の点検は現場の担当者に任され、組織として点検状況を把握するシステムはなかった。この点検放置以外にも様々な課題を抱えている。JAEAが目指す今年度中の運転再開はもともと無理があったという。
もんじゅが建設された目的は、使用済み核燃料から取り出した、プルトニウムを燃料として使う核燃料サイクルの、中核施設として建設されたもの。こうしたトラブル続きでは、実用化の道は遠のくばかりだ。
もう一つの核となる青森県六ヶ所村の再処理工場も、トラブルが続いており、期待は持てない状況だ。こうした実情に、規制委は、月内にも安全管理体制の改善を求める命令を出す予定だ。
現在もんじゅは、試運転段階でのトラブルで、停止中。もんじゅナトリウム漏れの事故、22年の機器落下事故、このように事故が連続して起きているもんじゅに、世論の風当たりは強くなっている。それというのも税金による事業費は、1兆円を超え、年間200億円の維持費がかかるのだ。これではもんじゅ存続の国民のコンセンサスを得るのも難しいとの見方が支配的だ。
この核燃料サイクルは、ロシア、フランス、中国なども高速増殖炉の実用化を目指している。今後は、根本的な組織の改革が望まれる。(編集担当:犬藤直也)