2009年09月16日 11:00

 花王 <4452> のビューティケア研究センターと月桂冠の総合研究所は、天然由来のメラニン色素による染毛技術の共同開発に成功した。

 月桂冠では、1990年代後半から行ってきた麹菌の有用遺伝子の解析により清酒麹菌にメラニンやメラニン色素のもとであるメラニン前躯体を生成する酵素・チロシナーゼの遺伝子を発見。米麹でメラニンを生産することに成功した。さらに、これらの解析から得た情報をもとに有用なタンパク質を高純度で生産できるシステムを開発し、研究用試薬などへ応用してきた。一方花王では、長年に渡り行われてきた毛髪および染毛に関する研究の中で、月桂冠が開発したチロシナーゼによりメラニンを生産する技術を活用することで、天然由来のメラニン色素で染毛することが可能にできると考えた。以来、2001年から8年間に渡り共同開発を進めてきた。

 その結果、毛髪の表面であるキューティクルにメラニン前躯体を浸透させることで、キューティクルの中でメラニンが生成し、白髪を徐々に染める技術を開発した。これは、毛髪に直接作用することが無いため、ダメージが少ないことも確認されている。また、酒造りに用いる微生物のひとつである清酒麹菌の働きをもとにすることで、生産量が不安定なメラニン前躯体を安定して生産することを可能にした。

 黒髪の色素成分のメラニンは、一般の染毛色素に比べて分子量で10倍以上もの大きさになる。そのため、毛髪の表層や内部に浸透できず、そのままでは染毛料としての使用はできない。より分子量の小さなメラニン前躯体を髪の毛に浸透させた後にメラニンへと変化させる研究が各方面で行われていたが、メラニン前躯体の生産量や、染まり具合などの課題が多く、実現に至っていなかった。今回の研究では、これらの問題を解決する結果となった。

 花王と月桂冠という異業種が互いの技術を活かし合いながら開発した今回の技術。両社は今後も、染毛料の生産、商品化の技術を向上させ、豊かな生活文化の実現に貢献していく考えだ。
(編集担当:山下紗季)