林野庁が松くい虫による全国の平成20年度の被害状況をまとめた。それによると、全国の被害材は62万6100立方メートルと前年度に比べ6900立方メートル増えた。林野庁は「北海道、青森を除く全国45都府県で被害が発生しており、太平洋側は岩手県中南部、日本海側は秋田県の青森県境付近に達していることから、今後更に北上することが懸念されている」としている。
松くい虫被害はマツノマダラカミキリにより運ばれたマツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入することにより引き起こされるマツの伝染病で、1978年当時、特に被害が爆発的に拡大し、翌年には243万立方メートルの被害が発生した。万葉集にも詠われ、山頂に美しい姿を見せていた奈良県橿原市にある香久山の松も、この頃被害に遭い、全ての松が枯れてしまった。その後、全国の自治体で松枯れ対策が進んだ結果、徐々に沈静化し、2005年度以降は毎年60万立方メートル台で被害が推移している。
林野庁では「全国の総被害量は微増になった。要因としては被害先端地域の長野県、岩手県での被害量の増加、一部の地域での夏期の高温少雨による被害量の増加等によるものと考えられる」としている。
前年度比較で増加していたのは、民有林では岩手県(16%増)、栃木県(13%増)、千葉県(54%増)、福井県(15%増)、長野県(26%増)、和歌山県(41%増)、鳥取県(3%増)、岡山県(1%増)、香川県(4%増)、愛媛県(9%増)、熊本県(738%増)、鹿児島県(61%増)だった。国有林は全体として、12%減少していた。松は景観上も大きな役割を果たしているだけに、一層の被害沈静化が望まれている。
(編集担当:福角忠夫)