6月第2週(10~14日)は5日間の取引。14日の金曜日は、オプションも先物も対象の3ヵ月に1度の「メジャーSQ」算出日。海外市場は、中国では10~12日は旧暦5月5日の「端午節」休暇で上海市場は休場になる。10日は「エリザベス女王誕生日」。本当の誕生日は4月21日だが英国王誕生日は6月第2月曜日で将来も固定。オーストラリアの市場は休場だがロンドン市場は通常通りに開く。
国内の経済指標は、10日は1~3月期の実質GDP確定値、4月の貿易収支と経常収支、5月の貸出・預金動向、消費者態度指数、景気ウォッチャー調査が、11日は4~6月期の法人企業景気予測調査、5月の工作機械受注速報値、マネーストックM2が、12日は4月の機械受注、5月の国内企業物価指数が、それぞれ発表される。
10~11日に日銀の金融政策決定会合が行われ、11日の会合終了後に黒田総裁が記者会見を行い、12日には金融経済月報、14日には5月21~22日の金融政策決定会合の議事要旨が日銀から発表される。金融政策決定会合で債券市場や株式市場の安定化のために何か具体的な対策が講じられたり、黒田総裁のコメントが出たりする可能性がある。もっぱら噂されるのが「LTRO(長期資金導入オペ)」で、市中銀行が日銀に資産担保証券などの担保を差し出して資金供給を受ける流動性供給手法。ECBがすでに導入している。
安倍内閣では13日に5月の月例経済報告が行われ、14日、第1~3弾をまとめた成長戦略と、経済財政運営に関する基本方針「骨太の方針」を閣議決定する。同じ日には財務省が5年物国債の入札を行う。
決算発表は、10日にくらコーポレーション<2695>の10月中間期、11日にイハラケミカル<4989>の10月中間期と飯田産業<8880>の4月本決算、13日にTASAKI<7968>の10月中間期、ナイガイ<8013>の1月第1四半期、東京ドーム<9681>の1月第1四半期、14日にエイチーム<3662>の7月第3四半期、西松屋チェーン<7545>の2月第1四半期が発表される。11日には注目のバイオベンチャー、ペプチドリーム<4587>が東証マザーズに新規上場する。
海外の経済指標は、11日はアメリカの4月の卸売在庫・売上高が、12日はドイツ、フランスの消費者物価指数(CPI)、英国の5月の失業率、ユーロ圏の4月の鉱工業生産、アメリカの5月の財政収支が、13日はアメリカの5月の小売売上高、輸入物価指数、輸出物価指数、4月の企業在庫が、14日はユーロ圏の5月の消費者物価指数(HICP)改定値、アメリカの5月の卸売物価指数(PPI)、1~3月期の四半期経常収支、5月の鉱工業生産、5月の設備稼働率、6月のミシガン大学消費者態度指数速報値が、それぞれ発表される。11~13日はアメリカ・LAでゲーム見本市「E3」が開催される。14日はイランの大統領選挙の投票日で、その結果が17~18日に開催されるロックアーンG8サミットに影響を及ぼすかもしれない。
「デトックス」という健康法がある。身体の中にたまった毒素を外に出すという意味で、断食、体操、特別な食事、サプリメント、入浴、呼吸法、マッサージなど、さまざまな方法が試みられている。人体ではなく東京株式市場にたまった毒素とは、乱高下や理由がわからない急騰、急落をもたらして相場をかき乱すリスク要因だが、それは徐々に外に出されつつある。来週はそれが最終段階を迎える「デトックス・ウィーク」になりそうだ。
「根拠不明な噂」の類は、まさに市場にとっては毒素。今週はアメリカの雇用統計に関して「かなり悪化するらしい」という噂が飛び交ってNYでも東京でも投資家心理をかき乱した。それも7日、5月の失業率こそ0.1ポイント悪化して7.6%だったが、非農業部門雇用者数の増加は17.5万人で4月の14.9万人より増え、市場予測の17万人を少し上回るという結果が出た。増加数が20万人を超えたりすると「量的緩和の縮小が早まる」と解釈されて株安要因になったところ、17.5万人はちょうどいい「湯加減」で、7日のNYダウは207ドル高と上昇した。こうして悪い噂がデトックスされたので、来週の東京市場には好影響を与えそうだ。
7日の日経平均は12548円まで下落した。この数字には重要な意味がある。それは「マドが埋まった」からである。日銀の異次元緩和「黒田バズーカ砲」が放たれた4月4日の終値は12634.54円で高値引けで上ヒゲなし。翌5日の安値(下ヒゲの下端)は12831.10円で、チャート上ではその間に197円の「マド」がポッカリ開いていた。それが7日に埋まった。「窓三日に埋めざればその勢い強し」という言葉があるが、3日どころか2ヵ月以上もたってから埋めにいく動きが出るとは、上昇相場で後に残していったマドは、テクニカル面の油断ならない毒素である。それがようやくアク抜け、つまりデトックスされた。
5月末は不安定だった債券先物市場は、日銀の大量の国債買入オペが入ってすでに相当程度デトックスされ、安定感が増している。日銀は10~11日の金融政策決定会合で市場にデトックス効果をもたらす手を追加で打ってくるかもしれない。
安倍内閣も株式市場のデトックスに躍起だ。5日の成長戦略第3弾に盛り込まなかった法人税の引き下げを6日の官房長官談話でほのめかし、7日には厚生労働省が、国内債券を減らして内外の株式、外債を増やすGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の公的年金の運用手法見直しを発表した。5日の市場の反応があまりにも冷淡だったため、株式市場の足を引っ張りかねない毒素を早めに外に出そうと急いだ様子がうかがえる。
だが、市場には先物売り・現物買いの「裁定買い残」と「信用買い残」という兆単位の大きな毒素が残っている。5月22日以前のスピード違反の「イケイケ相場」で、5月17日には裁定買い残は約4兆3000億円、信用買い残は約2兆8600億円に膨脹していた。さらに23日に日経平均が16000円に乗せられなかったこと、24日に前日下落分の半値戻しができなかったこと、その後の連日の乱高下などで、日経225先物の買い建て、売り建てのポジションは10円刻みで相当複雑にからみあっていると思われる。それが、先物なら裁定解消売り、ポジションの「投げ」、信用取引なら追証の差し入れを迫られての換金売りといった形でこの2週間、日経平均が突然、乱高下したりズルズル下落したりする原因の一つになってきた。言ってみれば、乱高下が乱高下の原因を生んで連鎖し、市場の需給バランスを狂わせてきたのである。
だがそれにも、終わりの日はくる。それは14日のメジャーSQだ。この日、おそらく6月限から9月限へのロールオーバーがかなわずに清算を余儀なくされる先物のポジションが大量に出て、朝から乱高下して荒れに荒れるだろう。日中値幅は1000円オーバーも覚悟だ。痛くて苦しい思いをしないと、しつこい毒素は市場から排出されない。だが、いったんデトックスしてしまえば、はやりの言葉で言えば「リボーン」することができ、生まれ変われる。次のフェーズに入っていける。
もちろん、メジャーSQによる「敗戦処理」は先物・オプションの話で、信用買い残は制度信用なら11月末頃まで、一般信用なら無期限に残る可能性がある。それでもSQで毒素の半分でも外に出してリボーンし新しいフェーズに入った東京市場は、失われた時間と値幅を取り戻して、需給も元のノーマルな状態に復帰していけるだろう。なぜなら、半年前と違って好転した企業業績という裏付けがあるからだ。今、株式評論家やアナリストが口を揃えて言う「業績相場への移行」とは、まさにそういうこと。その過程で、株価の上昇が解毒剤になり、敗戦処理されずに残された信用買い残も徐々に解毒され、無害化されていくのではないだろうか。毒素を外に出すだけでなく体内で解毒・無害化することも、広い意味でデトックスととらえられている。
来週は、外部要因、テクニカル、政策などの面である程度のデトックス効果が不動産や金融あたりのセクターに出そうだが、メジャーSQ前の毒素の最後のあがきで為替市場と連動した波乱はなお続くとみられ、輸出関連株、日経平均寄与度の高い値がさ株、信用買い残の多い銘柄は突風に注意。それでも14日までに日経平均が持ち直されて13500円あたりまで接近できれば、変動レンジは12800~13800円とみる。デトックスの最終局面、14日のメジャーSQの嵐をやり過ごせば、17日からは14000円、15000円の大台回復を目指し、体内浄化が進んだ市場で出直しだ。