医療界の反発もあり、検討開始から6年が経過し、このほどようやく「医療版事故調査制度」の概要が、厚生労働省の有識者会議で固まった。
同制度は、診療行為中に、起きた予期せぬ死亡事故の原因を究明するため、民間の第三者機関が調査を行う。特に注目したいのは、院内調査に、外部の意志が加わり、客観性を持たせたことであろう。
厚労省は、今後、手続きを定めるガイドラインを作成した上で、医療法改正案をまとめ、早ければ今秋の臨時国会に提出する方針。新制度では、事故調が、歯科診療所や助産師説を含め,全国約18万施設の事故事例を集め、原因を分析する。
現在医療界は、医療事故が相次いでおり、遺族からは、医療機関側による原因究明が不十分との指摘が出ていたのは確か。こうした意向に応えるためにも調査委の早急の設置が求められていた。
今回の制度設置においてやはり一番論議されたのは、外部の医師を入れて院内調査を行うことだった。厚労省は、当初外部の医師を入れることを求めない考えだった。しかし「信頼がここまで傷ついているのに外部の入らない院内調査で、社会の納得は得られない」との意見も出て、最後は、原則として、外部の医療専門家の意見を受けることに決まった。しかし、外部の医師を受け入れて、院内調査を行う場合、一部の外科医や、解剖医に調査依頼が集中する可能性はないか。厚労省はこうしたことを考慮して、外部の医師受け入れに消極的であったのだろう。
事故調査委と言えば、航空機事故の運輸安全委、製品事故を調べる消費者安全調査委などいずれも国の機関で、調査のために立ち入り検査をしたり、証拠を提出させたり強制的な捜査権がある。しかし今回の医療版の事故調は民間であるため強制的な権限はない。
当然カルテを提出しないなど調査に協力しない場合は、氏名の公表などがあるという。医療界はこの点については、公的機関が調査すれば医師個人の行政処分につながるのではと前々から反発していた。
事故調は遺族の申請があれば院内調査と並行して独自調査も行うとしている。(編集担当:犬藤直也)