高速交通整備・田舎の人口減少をかえって加速 藻谷日本政策投資銀行地域振興部参事役

2008年03月03日 11:00

 日本政策投資銀行地域振興部参事役の藻谷浩介氏は「地域間格差の実態と問題の本当の所在」と題した報告を2月27日総務省で開かれた定住自立圏構想研究会で行った。藻谷氏は「道路整備や新幹線整備の建設推進派」とされているが、報告資料は大胆な内容になっている。以下はその一部。

 道路行政で関心を呼んでいるが、高速交通整備について、藻谷氏は「住民の生活は便利になるが、経済面、人口面ではマイナスの方が大きい」と分析。その理由として、(1)観光客の増加は1年だけで、数年後には逆に前より少なくなる。結果、旅館など宿泊施設の淘汰が進む(2)支店や営業所が大きな町に統廃合(あるいは減員)される。(3)女性や若者が大きい町に買い物に行けるようになり、地元商店の淘汰が進む。(4)都市に住む子どもが週末に簡単に親の様子を見にいけるようになり、Uターンが減る。(5)こうした要因から、田舎の人口減少はかえって加速する、とみている。

  また、日本の人口構造から、「少なくとも今後、半世紀、日本の20歳から59歳までの人口は構造的に減少を続ける。就業者数もこれに連動して減少する。20歳から59歳までの人口減少は10年で700万人というようなペースであり、これを受けて移民受け入れや今更の出生者数増加努力で補うのは不可能」。また、「就業者数の減少は人手不足を招き、失業率の低下や機械化・情報化への投資増加を生じさせ、生産性の向上による企業収益の向上につながるが、就業者数の減少は可処分所得の減少であり、多くの商品の消費が年々冷え込むこととなり、小売販売額の低下は止まらない」と厳しい状況を提示している。

 特に、20歳から59歳にしか消費されない戸建住宅、ファミリーカー、オフィス、通勤定期、職場旅行、結婚式などを例にあげ、この業界が厳しい影響を受けることをあげている。

  こうした時代に対応するため、「江戸時代の以前の農民のように、男性も子育てという重労働を分担するように、男性の育児分担を当たり前の社会にする」。また、労働力の確保のためには「移民受け入れの前に、女性と高齢者を活用する。女性就労率を2割にすれば1000万人以上の労働者が増える」。福祉・年金は「同じ世代の互助にすることにより、問題が解決する」。産業は「安価大量生産販売から高価少量生産販売に切り替える」「高齢経営者の世代交代こそ最重要課題」。まちづくりは市街地再集中をはかり、新たな開発を停止することなどをあげている。