2016年にオーストラリアでの自動車製造打ち切りを発表したフォードに続き、GMホールデンも同時期に豪州の工場を閉鎖するとの観測が出ている。政府補助金の追加ないし賃金引下げが不可能なら、工場閉鎖が最も現実的な選択肢となる。鉱物輸出が急拡大して豪ドル高が続き、輸入車が価格面で有利となった。過去12年間、GMホールデンは年平均で2千8百万豪ドル(約26億円)の利益しか計上できず、去年は損失を記録した。なお、労働組合は賃金引き下げを拒否する構えだ。
GM ホールデンはもっと輸出に力を注ぐべきだ、との注文も政治家などから聞かれる。しかしながら、GMホールデンのマネージング・ディレクター、マイク・デべ レックス氏は、トヨタ<7203>はカムリを輸出しているが、損失を出しながらの輸出だと反論している。トヨタ・オーストラリアは昨年度約1億5千万ドル(約138億 円)の黒字を記録したが、豪州国内工場だけで計算すれば赤字で、輸出すればするほど損失が増え、輸入車の販売で利益を計上している状態、と報道されている。
GMホールデンは純中型セダンのクルーズ等を南オーストラリア州、アデレードの北郊の工場で生産しているが、GMのタイ工場から輸入したほうがコストが安く、企業全体の利潤は増える。実際、トヨタ・オーストラリア同様、GMホールデンも輸入車の販売で赤字を補填している。もっとも、国内自動車生産から撤退すれば、ブランド名への影響が考えられる。「ホールデン」は豪国民が80年以上慣れ親しんだ国内ブランドだからだ。「ホールデン・コモドール」は2010年まで、15年連続国内新車販売台数第一位の記録を続けていた。国内の経済と雇用に少しでも役立つようにと、国産車の購入をまず考える国民は少なくない。とはいえ、豪ドル高が続く中、輸入車は価格面から人気 で、2012年度の豪州国内新車販売約110万台のうち、わずかに12.6%が国産車だった。マツダ3やトヨタ・カローラが新車販売台数のトップの時期もある。
仮にGMホールデンが豪州内の自動車生産打ち切りを決めた場合、トヨタ・オーストラリアにはどう影響するか。トヨタが豪州内唯一の自動車生産メーカーとして生き残れば、トヨタが国内の雇用を守る、 国内唯一の国産車ブランドの地位を確立する可能性がある。とはいえ、GMホールデンが自動車生産を打ち切ると、下請けメーカーが部品を大量生産できなくなり、部品原価の上昇につながる。トヨタ・オーストラリアも自動車生産打ち切りを余儀なくされ、豪州からは自動車製造工場がなくなってしまう、との予測が多い。トヨタは主に中東へカムリを輸出、タイとマレーシアの工場にはエンジンを輸出している。
今月に入って豪ドル高の是正が進み、1豪ドル=90円台前半まで下がり、豪州の輸出業界には朗報であるが、今後の予測には不確定要素が多い。GMホールデンとトヨタ・オーストラリア、同業者同士持ちつ持たれつの関係で、もしトヨタが工場を閉鎖するならGMホールデンも工場を閉鎖するしかない、デべレックス氏は語っている。(編集担当:轟和耶)