国組織として「医療安全調査委員会」(仮称)の創設を提言
自由民主党 医療紛争処理のあり方検討会が案をまとめる
医療上の死亡事故が発生した場合、原因究明や再発防止に向けた対策など専門的に行う機関がないことから、現行では医療側と患者の遺族など被害者との当事者間による民事や刑事手続きによる解決手段しかない状況であるため、自民党の医療紛争処理のあり方検討会では「診療行為に係る死因究明制度創設など」の検討を進めてきたが、このほど、医療の透明性、信頼性を高めるために新しい制度が必要との報告をまとめた。
検討会では医療リスクに対する支援体制の整備を図り、医療従事者が萎縮することなく医療を行える環境を整えることも、医師不足対策の一環として重要かつ緊急の課題としている。
検討会がまとめた新制度の骨格では医療死亡事故の原因究明、再発防止とともに、医療の透明性、信頼性向上をはかるために国の組織として「医療安全調査委員会」(仮称)を創設する。委員会は中央の委員会と地方ブロック単位での委員会、調査チームで構成し、事故の再発防止をはかるために関係大臣への勧告、建議などを行う、としている。
また、個別事例の評価は解剖や関係者の事情聴取、臨床評価などを行う調査チームが担当し、地方ブロック単位の委員会は調査チームの作成した原案を調査報告書として決定する。中央、地方ブロック、調査チームともに医療の専門家を中心に法律関係者や患者、遺族の立場を代表する人の参画を得て構成することとし、調査対象となる個別の事例の関係者は構成員には含まない。これは委員会や調査チームの作業の客観性、公平性、透明性を高めるための措置。
医療死亡事故が発生した場合に医療機関から委員会への届出を制度化し、届出に基づいて委員会が調査を開始。遺族からの調査依頼にも対応する。調査した報告書は遺族、医療機関に交付、あわせて個人情報に配慮しながら、再発防止のために、公表する、としている。
また、委員会の報告書は民事手続きにも活用できることとし、中立、公平な立場で裁判外紛争処理の活用を推進する。刑事手続きにあたっては故意や重大な過失があった事例、その他の悪質な事例に対象を限定して「謙抑的に対応すべきものとする」としている。ただし、「報告書を刑事手続きに使用することは妨げない」(検討会)。
検討会では政府に対し、医療機関や遺族から医療死亡事故の届出や調査に関する相談を受け付ける仕組みを設けるなど、数項目にわたって制度運用にあたっての実務的な留意点も指摘している。