デフレ下で「安売り戦競争」の象徴にもなってきた牛丼チェーン。今年4月には吉野家が「牛丼並盛」を380円から280円に値下げし、「すき家」と「松屋」の通常価格に並んだ。だが各社とも、足元では業績が振るわない。
大手3社が発表した2012年度の決算は軒並み、大幅な減益となった。コメや油などの原材料価格や人件費の高騰で利益率が落ち込んだほか、安売り競争が激化して既存店の売上が伸び悩んでいる。
牛丼店はもはや、「安さ」だけでは消費者の心をつかめなくなっている。ソフトブレーン・フィールド株式会社が7月上旬に「消費者の牛丼チェーンの利用実態調査」をおこなったところ、「牛丼店には行かない」が41%を占める結果となった。
調査対象は10~80代の男女5338名(女性3556名、男性1782名)。男女別では、女性の50%が「行かない」としているが、男性では25%にとどまった。牛丼チェーンに行く頻度については、「半年に1回程度」が最多で約4割を占める。
牛丼チェーンに行かない理由としては、「何となく安っぽいイメージがあるから(男性25歳・未婚)」「働いていたときにはたまに行ったことはあるが、基本ガテン系の皆さんの行きつけのおみせという感じ(男性58歳・既婚)」、「落ち着かない。外から丸見えで女性1人では入りにくい(女性39歳・既婚)」などのコメントがあげられた。
一方で「よく行く牛丼チェーン」には、男女や年代によって大きな違いがみられる。女性にはサラダなどのサイドメニューが充実している「すき家」の人気が高く、男性には「吉野家」が人気。また年代別にみると、「吉野家」は20代以下~30代よりも40~70代以上に人気が高かった。若手サラリーマンに人気がありそうな「吉野家」だが、実際は中高年以上の男性の方がよく行っているのかもしれない。
この夏、牛丼各社は通常より価格が高い新メニューを次々に打ち出している。「吉野家」は7月上旬から、従来の牛丼280円より高い「牛カルビ丼」「ねぎ塩ロース豚丼」(各並盛り480円)を発売。「松屋」も並盛り500円の「唐揚げ丼」を発売した。高価格帯へのシフトにより、デフレ下で安さに慣れきった消費者を呼び戻せるか。「牛丼競争」はまだまだ終わらない。(編集担当:北条かや)