日本経済がアベノミクスでデフレを脱しても、低価格競争のデフレ体質から抜けきれない外食産業にはどんな未来が待っているのか。
ファーストフード、ファミリーレストランなど外食産業の2013年2月期決算が出揃った。かつての急成長業種も、現在は業態によって差はあるものの売上高は横ばいか、マイナス成長に陥っているのが実情。「メニューを値下げしなければ競争に勝てない」と他の分野に先駆けてデフレスパイラルに巻き込まれていったのも外食産業で、「100円マック」や「牛丼」はデフレの象徴と呼ばれた。そんなデフレの「負の連鎖」は、はたしてアベノミクスで断ち切ることができるのだろうか。まず、2月期決算の外食産業主要8社をとりあげ、決算短信の業績数字、今期の見通しの数字やその説明から各社の今期の見通しや戦略を探ってみた。
赤字転落も連続増益もV字回復もある決算
牛丼店「吉野家」やうどん店「はなまる」、持ち帰り寿司店「京樽」を展開する吉野家HD<9861>の売上高は0.8%減の1645億円、営業利益は60.9%減の18億円、最終損益は3.6億円の赤字だった(前々期は13億円の黒字)。「吉野家」は競合他社よりも高い価格がネックになり既存店客数は7%近く、既存店売上高は約2%減って売上減。牛肉や米など原材料価格の上昇が利益を大きく圧迫した。国内の吉野家の新規出店数は26店舗だった。今期の見通しは、売上高は5.1%増の1730億円、営業利益は59.8%増の30億円、最終損益は10億円の黒字転換を見込む。年間配当は2000円で据え置き。2月のアメリカ産牛肉の輸入規制の緩和を受けて4月18日に牛丼並を100円値下げして280円とし、競合他社と同じ条件で競争に臨む。広告宣伝費も8割増額して、原価率の悪化は売上増でカバーできるとみている。新規出店数は53店舗だが低価格新業態の出店は凍結する。
回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を展開するカッパクリエイトHD<7421>の売上高は1.6%増の941億円、営業利益は76.1%減の8.0億円、最終損益は22億円の赤字だった(前々期は15億円の黒字)。既存店売上高が約2%減少し、集客力強化を狙って寿司メニューの種類を増やしたことによる原価率の上昇、広告宣伝費の負担増、店舗の減損損失が利益を圧迫して7年ぶりの赤字転落、14年ぶりの無配となった。今期の見通しは、売上高は0.6%増の947億円、営業利益は107.2%増の16億円、最終損益は5.2億円の黒字転換、年間配当は復配して15円を見込む。店舗オペレーションの改善、従業員教育の徹底による「クレーム0化」で既存店をテコ入れし店舗ブランドの再構築を図る考え。
コーヒーショップ「ドトールコーヒーショップ」を展開するドトール・日レスHD<3087>の売上高は0.1%増の1078億円、営業利益は1.2%増の71億円、最終利益は43.2%増の35億円だった。国内外で55店舗を新規出店する一方、改装で既存店もてこ入れしたため「ドトールコーヒー」も直営のパスタ店も売上が伸びた。食品宅配のらでぃっしゅぼーや株を売却して特別利益を13億円計上して最終利益は大幅増。今期の見通しは、売上高は3.1%増の1111億円、営業利益は7.3%増の77億円、最終利益は3.1%増の37億円。年間配当は26円で据え置き。前期のほぼ2倍の105店の積極的な新規出店を行い、新店効果が寄与する見込みである。