高エネルギー加速研究機構(茨城県)や、京都大、東京大など11ヵ国の国際研究チームは、7月19日素粒子のニュートリノが、「ミュー型」から「電子型」に変化する現象を世界で初めて発見したと欧州物理学会で、発表した。この変化は、「ニュートリノ振動」と呼ばれ、観測が難しく未確認だった最後の1通りの変化を実験で確認したもの。宇宙の誕生で、決定的な役割を果たしたとされる物理現象「CP対称性の破れ」を解明するカギとなる成果だという。
これは、ストックホルムで、開催中の欧州物理学会で、国際チームが発表したもの。ニュートリノとは、物質全体を形作る最小単位の素粒子の一つ。宇宙空間に大量に存在し、地上にも常に降り注いでいるが、他の物質とほとんど反応せずに、すり抜けるため、観測が難しいとされている。
電子の100万分の1以下の微小な質量があることが分かっている。ニュートリノは、電子型、ミュー型,タウ型の3種類あり、互いに別の型に変化し続けている。ミュー型から電子型への変化は、実験で、確認可能な変化のパターン4通りの中で、唯一未確認で、研究が続いていた。
国際チームは、大強度陽子加速器施設「J-PARC」(茨城県東海村)で、大量のミュー型を作り、295km離れた東大の観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)へ向けて発射した。旧神岡鉱山水槽(直径、高さ格40m)で、ニュートリノが水中を通ることで出る、かすかな光(チェレンコフ光)を検出し、到着までに電子型に変化した割合を調べた。その結果2010年1月から今年4月の間に神岡で、532個のニュートリノを検出し、内28個が電子型と分かった。
実験で判明した電子型の出現確立を、他のデータと総合すると、ニュートリノでも「敗れ」の証明につながることが期待できるという。物理学で最大の謎とされていた「CP対称性の破れ」と言う現象解明の研究に、きわめて大きな弾みをつけたものとして世界でも注目されている。(編集担当:犬藤直也)