表面にはやむ得ない換金売りのケースや小銭稼ぎ狙いの小悪党などいろいろ出てきそうだが、一番奥の間に控えている「諸悪の根源」はやはり、5月23日から狂ったままの需給バランスなのだろう。8月上旬でも約3兆円の信用買い残、約3兆5000億円の裁定買い残という、昨年11月から半年間の「アベノミクス・イケイケ相場」が残したツケが、最近の「ないとこ引け頻発」の真犯人なのではないか。
個人投資家も雲集して市場が活況を呈し、売買高が40億株台、50億株台の日なら、需給バランスの悪影響はある程度はマスクされるのだろうが、夏枯れの薄商いで20億株そこそこと潮が引いた状況では、まるで大潮の日の干潮の時間帯だけ水面上に出現する海底の岩のように、それがもろに露出してきたのだろう。現状では「閑散に売りなし」とはいかず、「夏枯れに急騰、急落あり」と言ったほうが適当。そうでなくても凶事が多い8月だ。アクシデント的に「ドル円93円で日経平均13000円割れ」のような事態もありうると心の準備はしておいたほうがいい。
こんなことがいつまで続くのか。「日柄調整」という言葉があるが、時の流れが解決してくれることもある。「人の噂も75日」ということわざもあり、移動平均線に75日線があるように株式市場では75日は一つの区切り。5月23日から数えて75営業日目は9月5日になる。
9月5日は日銀の金融政策決定会合の2日目でその結果が判明するだけでなく、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれるG20サミットの初日でもある。翌6日にはFOMC(17~18日)での量的緩和縮小開始時期の判断に大きな影響を及ぼすと考えられるアメリカの8月の雇用統計が発表され、7日には2020年のオリンピック開催地が決まる。区切りになりそうなイベントが目白押しだ。
ということはそれまで、少なくとも8月いっぱいは、需給バランスが狂ったまま先物の流れに身を任せという状況は大きく変わらないとみたほうがいい。為替も「8月は円高になる」というアノマリーがあり、量的緩和縮小9月開始がまた有力になってきた状況では100円台回復は望み薄。あと3週間、残暑に耐えながら突然やってくる急騰、急落に脅かされる相場を我慢しなければならない。
来週は決算発表が峠を越して手がかり難。加えてお盆で夏枯れがピークに達しそうだ。休めばいいのに証券取引所は開くのだからしかたない。12日の月曜日の四半期GDP発表は週最大のイベントになりそうで、悪い数字が出れば日経平均13400円割れも覚悟。良い数字が出ても14000円より上に行けるだけの市場エネルギーはなさそうで、後はずっとその範囲内におさまって日経平均終値の変動幅は13400~14000円とみる。こんな時期には「休むも相場」だ。(編集担当:寺尾淳)