【日経平均】「マド」埋め後は豪利下げまつりで143円高

2013年08月06日 20:14

 NYダウは46ドル安で3日ぶり反落。ISM非製造業景況指数は市場予測を上回ったが、市場関係者の多くが夏休みで閑散とする中、利益確定売りに押され高安まちまちに。ダラス連銀のフィッシャー総裁が「量的緩和の縮小時期が近づいた」と講演で発言しても刺激にならなかった。NASDAQ総合指数は5日続伸した。6日朝方の為替レートは、ドル円が98円台前半、ユーロ円が130円台前半で前日より円高が進行した。
 
取引時間前の外資系証券注文状況は3日ぶり売り越しで日経平均は20.94円安の14237.10円で始まる。ドル円が98円を割る円高に合わせて午前9時台は大きく下落し、1日と2日のローソク足の間に141円空いた「マド」を埋めにかかる。14005円まで下がれば完全に埋まるが、上海、香港市場が大幅下落で始まりアジア株が軟調でも前場の最安値は14031円で、中途半端なまま後場はドル円が98円台に戻ったので折り返し、急速に下げ幅を圧縮する。

 午後1時20分頃にはプラスになり、さらに14300円を突破。そこで起きたのはオーストラリア準備銀行の利下げ期待で、期待通りに3ヵ月ぶりに2.75%から2.5%へ0.25%引き下げを発表。対円レートで豪ドルは上昇し、米ドルも上昇した。とはいえTOPIXを置き去りにした先物主導の上昇なので、内閣府が6月の景気動向指数を発表した直後の2時台にはマイナスになる時間帯もあるなど日経平均の値動きは不安定。その現状判断指数は0.8ポイント低下、先行判断指数は3.7ポイント低下で国内景気に陰りが見えていた。しかし、「豪利下げまつり」の余勢をかって再び1日や2日のような大引け間際の急騰が起こり、終値は143.02円高の14401.06円。TOPIXも+8.92の1193.66で、ともに高値引けだった。売買高は22億株、売買代金は1兆9407億円で、後場に商いが増えていた。

 値上がり銘柄は1130、値下がり銘柄は487でほぼ2対1。マイナスのセクターは鉱業、その他金融、水産・農林、金属製品の4業種だけで、プラスの上位は不動産、その他製品、電力・ガス、保険、海運、食料品などで、下位は石油・石炭、証券などだった。

 日経平均寄与度は、プラス1位がアメリカの高級ジーンズ「Jブランド」の直営店を9月から展開するファーストリテイリング<9983>、マイナス1位がソフトバンク<9984>で、14円対14円で寄与度の綱引きは引き分け。中国関連のファナック<6954>はプラス側、コマツ<6301>、日立建機<6305>はマイナス側に味方していた。

 メガバンクはふるわなかったが地銀は日替わりヒーロー。高松市が本店の百十四銀行<8386>は決算で4~9月中間期の経常利益見通しを約2倍に上方修正し増益率一挙に2.5倍の上に400万株上限の自社株買い実施を発表して朝から買われ、43円高で値上がり率3位になった。不動産は後場急伸して業種別騰落率トップで、三井不動産<8801>は90円高、東京・千鳥ヶ淵に建設中の「億ション」の坪単価800万円が話題の三菱地所<8802>は44円高、住友不動産<8830>は130円高で3銘柄とも高値引け。東京建物<8804>は19円高。ヒューリック<3003>は38円高で年初来高値を更新した。

 ソニー<6758>は朝方にサードポイントのエンタメ事業分離・上場の提案を正式に拒絶したと伝わり、市場は98円安、値下がり率12位で厳しく反応した。パナソニック<6752>はNTTドコモ<9437>向けスマホ新製品の供給を停止と報じられ、採算改善と解釈されて17円高になった。東芝<6502>は日経新聞1面に、4000億円を投資してサンディスクと共同でNAND型フラッシュメモリーの新工場を三重県に建設し2014年中に量産を開始するという記事が出て6円高になった。東芝の本格的な増産投資は2年ぶり。キヤノン<7751>は35円高で前場の地合いが悪い中でも底堅かった。

 決算がらみでは、新電元工業<6844>は太陽光発電向けのパワーコンディショナーが飛ぶように売れていて、中間期で通期見通しの数字を達成してしまいそうなほど好調な業績を反映してストップ高比例配分の80円高で値上がり率トップ。KYB(カヤバ工業)<7242>は通期純利益見通しを40%増の109億円に上方修正し52円高で値上がり率8位。積水ハウス<1928>は2~7月期中間期の純利益見通しを93%増の330億円に上方修正して32円高だった。

 日新製鋼HD<5413>は、堺製造所の火災に伴う特別損失を計上して通期の最終損益を15億円下方修正し中間配当を見送ったが、修正幅が市場予測ほど悪くなかったので148円の大幅高で値上がり率2位。IIJ<3774>は正午に発表し減益決算では失望売りは致し方なく200円安で値下がり率8位。1時30分に発表したヤマハ発動機<7272>は通期見通しを上方修正しても市場予測に届かず67円安で値下がり率13位。2時に発表したIHI<7013>は中間期は営業利益を上方修正、通期は営業利益は据え置きで純利益を上方修正したが、ことごとく市場予測を下回り1円安。この日も「市場予測の暴力」が猛威をふるっていた。

 この日の主役は「人材派遣業」。厚生労働省が規制緩和策として「同一業務の派遣は3年まで」という規定を廃止すると報じられ、朝から「政策に売りなし」で一斉に買われた。フルキャストHD<4848>は売買高6位、売買代金13位と商いを伴って上昇し、32円高で年初来高値を更新して値上がり率13位に入った。パソナ<2168>、キャリアデザインセンター<2410>は上昇して終えたが、「厚生労働省が最低賃金を全国平均で14円アップ」という業界の〃原価率悪化〃につながるニュースも入り、15円安で終えたアウトソーシング<2427>、年初来高値を更新しても5円安で終えたテンプHD<2181>のように後場、売り込まれる銘柄も出た。(編集担当:寺尾淳)