今夏、世界のスポーツ界で、ドーピング(禁止薬物使用)違反発覚が相次ぎ、各界の大物選手が出場停止処分となり、衝撃が走った。
7月14日男子100m世界歴代2位、9秒69の記録を持つ、タイソン・ゲイ(31 米)と同種目の前世界記録保持者アサファ・パウエル(30 ジャマイカ)のドーピング違反が相次いで明らかになったのだ。
世界陸上選手権を前に、世界陸上界を震撼とさせた事件であった。次いで8月5日には、トルコの陸連が、五輪メダリストを含む31選手をドーピング違反で、2年間資格停止の処分をした。
こうしたドーピング問題は、単に陸上界だけにとどまらず、米大リーグ機構(MLB)にも波及した。8月5日ヤンキースの通称A・ロッドことアレックス・ロドリゲス(38)が、来季レギュラーシーズン終了までの、211試合の出場停止となるなど13選手を処分が行われた。大物選手の相次ぐドーピング違反で、米大リーグも混乱に陥った。
なぜ今年になってドーピングこのように、違反が続出しているのか。その背景を探ってみると、一つには、これまで半ば常習化していたのが、表面化したことがあげられよう。
先進国のスポーツ界では、自らの血液を保存しておき、レース前に、輸血する「血液ドーピング」や、検出しにくいヒト成長ホルモンなどで、検査の裏をかく「高度な薬物手法」が多用されていたという見方もある。こうした実態を解消するためには、抜き打ち検査しかないと、今年実行したのだ。これに大物選手の違反が発覚したという。
もう一つの理由として考えられるのが、これまで消極的であった途上国や、新興国がドーピング検査の設備を完備し、違反摘発に積極的に乗り出したことであろう。こうした実情を踏まえて、世界反ドーピング機関(ADA)や国際陸連は高度化するドーピング行為の対策として、捜査機関などの協力を得て、選手の血液成分を定期的に採取し、記録、ドーピングによる変化を読み取る「生体パスポート制度の導入を検討している。
日本でもプロ・アマ問わず多くのスポーツで、ドーピング検査を実施しているのは確か。しかしまだメダリストや大物選手のドーピング発覚はない。(編集担当:犬藤直也)