高齢者による犯罪が増え続けている。法務省の「平成24年版犯罪白書」によると、2011年に検挙された高齢者(65歳以上)は約5万人で、20年前の6.3倍になった。
人口比で見ても、一般刑法犯の検挙人員は20年前と比べて、高齢者では約3.4倍にまで上昇している。20~29歳の増加率が約1.1倍、30~39歳で約1.4倍、40~49歳で約1.3倍、50~64歳で約1.7倍であることを考えると、最近の高齢犯罪者の増加率は、高齢化のスピードをはるかに上回っている。
高齢者の犯罪は、他の世代と比べて「窃盗」の割合が高い。特に女性の高齢犯罪者のうち、9割以上が窃盗、中でも「万引き」が約8割を占めている。ただし最近では男性の高齢者を中心に、殺人や強盗、傷害や暴行の検挙人数も増えている。
このような状況などから、2000年代後半には「キレる」お年寄りを『暴走老人!』(藤原 智美著、文春文庫)と名づけたり、『困った老人と上手につきあう方法』(和田 秀樹著、宝島SUGOI文庫)などの著作が相次いで出版されたりした。
このようにお年寄りが「キレ」たり、罪を犯したりする背景には、経済的に困窮した高齢者が増えていることは言うまでもない。内閣府の「平成24年版 高齢社会白書」によると、今や75歳以上の女性の4人に1人、男性の5人に1人が貧困層だ。また、生活保護の受給者のうち4割は65歳以上のお年寄りで、その数は年々増加している。
身寄りのないお年寄りも増えている。高齢者の仮釈放率は他の世代と比べ、20ポイント近く低い。引受人がいない高齢者が多いためだ。さらに2回以上、刑務所へ入所する者の割合も他の年代と比べて高く、刑務所が「福祉施設」のようになっている現状もある。
こうした状況が互いに作用し合い、一部の高齢者の間には、不安や孤独感、怒りなどが鬱積している可能性はある。「キレる」「罪を犯す」高齢者が増えている背景には、貧困率の上昇に加え、お年寄りに特有の社会不安があることも重視されるべきだろう。問題解決への道のりは遠い。(編集担当:北条かや)