【今週の展望】量的緩和縮小開始決定で14000円割れか

2013年09月17日 09:58

 今週9月第3週(9月17~20日)は、16日の月曜日が「敬老の日」で祝日休場なので4日間の取引。16日はメキシコが独立記念日、マレーシアがマレーシア・デーで休場。東アジア各国では「中秋節」の連休があり、韓国(KOSPI)は18~20日、中国(上海総合指数)、台湾(加権指数)は19~20日、香港(ハンセン指数)は20日が休場になる。

 来週最大のイベントは17~18日のアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)で、結果は日本時間で19日未明の午前3時頃にわかり、バーナンキ議長の記者会見もある。

 国内の経済指標は、17日は8月の首都圏新規マンション販売、18日は8月の訪日外国人数、19日は8月の貿易統計、7月の全産業活動指数、7月の景気動向指数改定値、20日は8月の全国百貨店売上高、全国コンビニ売上高が、それぞれ発表される。

 19日の全国証券大会で黒田日銀総裁、麻生財務大臣が挨拶する。19~22日に千葉市の幕張メッセで「東京ゲームショウ」が開催され、サプライズ発表などでゲーム関連銘柄が動きが出るかもしれない。20日はアップルが新型iPhoneを日米で同時発売する。

 主要企業の決算発表は、17日はあさひ<3333>の2月期第2四半期、18日はツルハHD<3391>の5月期第1四半期、クスリのアオキ<33983>の5月期第1四半期、19日はサンワドー<7431>の2月期第2四半期、20日はジーンズメイト<7448>の2月期第2四半期の発表がある。20日に不動産仲介や戸建て分譲、マンション販売などを手がけるオープンハウス<3288>が東証1部に新規上場する。公開価格は1780円。東京23区と川崎市、横浜市が営業エリアなので「五輪プレミアム」がつくかもしれない。

 海外の経済指標は、16日はユーロ圏の8月の消費者物価指数(HICP)改定値、アメリカの9月のNY連銀製造業景気指数、8月の鉱工業生産、設備稼働率、17日はドイツの9月のZEW景況感指数、英国の8月の卸売物価指数(PPI)、消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、ユーロ圏の7月の経常収支、貿易収支、9月のZEW景況感指数、アメリカの8月の消費者物価指数(CPI)、7月の対米証券投資、9月のNAHB住宅市場指数、18日はユーロ圏の7月の建設支出、アメリカの8月の住宅着工件数、建設許可件数、19日は英国の8月の小売売上高指数、アメリカの4~6月期四半期経常収支、9月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、8月の中古住宅販売件数、景気先行指標総合指数、20日はユーロ圏の9月の消費者信頼感指数速報値が、それぞれ発表される。

 17日に国連総会が開会する。シリア問題はそれまでに収まるところに収まるだろうか。20日にインド準備銀行の金融政策決定会合が開かれ、FOMCの決定に対するルピー防衛策が講じられるかもしれない。20日にはインドネシアのバリ島でAPEC財務相会合が開かれる。22日はドイツの総選挙投票日で、メルケル政権に国民の審判が下る。

 アメリカ主要企業の決算発表は17日はアドビ・システムズ、18日はオラクル、フェデックスが発表する予定。なお、NYダウ30種平均は20日の取引終了後に採用銘柄の入れ替えが行われ、4~6月のパソコン世界シェア首位をレノボに譲ったヒューレット・パッカード(HP)、主要企業決算でいつも一番乗りのアルコア、メリルリンチを救済合併したバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)が外れ、世界最強の投資銀行?ゴールドマンサックス、「Go with」VISA、「Just do it」のナイキが加わる。製造業がまた減って非製造業が過半数を占めても、日本語では「ダウ工業株30種平均」と訳され続けるのだろうか。

 オリンピック開催地決定はまさにポジティブサプライズだった。海外メディアに福島第一原発の汚染水問題を集中的に追及され「東京はもうダメだろう」と観念したのか、9月第1週の投資主体別売買動向では個人投資家の売りがふくらんでいた。それが、フタならぬ封筒を開けてみると裏返して「トーキョー」。しかし、東京市場は建設株が大ブレイクして余韻が週末まで残ったものの、他の主力株は高安まちまち。低位株ばかり買われる傾向もみられた。日経平均は9日、10日こそ3ケタ高でも11日は大引け前に急落してかろうじて1円高。12日は調整が入ってマイナスで、13日は乱高下の末に終値でプラスに滑り込みで、2勝3敗の負け越しと紙一重だった。終値は14500円を超えられず、商いもそれほど盛り上がらず、「お祭り騒ぎ」とは言えない意外にクールな1週間だった。

 その大きな要因は13日のメジャーSQ前の様子見に加えて、17~18日のFOMC(連邦公開市場委員会)の結果待ちだろう。「アメリカさんに後でどんな目にあわされるかわからないから、オリンピックで騒げない」というところか。最も警戒するのは、やはりドル円の為替レートが大きく円高に振れる事態だろう。それは「量的緩和の縮小の程度による」という見方がされている。

 教科書的に言えば量的緩和は利下げと同じとみなされ、その反対だから「量的緩和縮小-アメリカの金利高-ドル高-円安」と考えがちだが、世界の経済は日米だけで回っているわけではない。「量的緩和縮小-新興国からのマネーの引き揚げ-新興国の通貨安、株安-リスクオフ-リスク回避の円買い-円高」というシナリオも考えられる。量的緩和縮小に言及した5月22日や6月19日のバーナンキ発言直後の状況を思えば、そのシナリオのほうがむしろ現実味を帯びている。

 量的緩和の縮小開始はもはや不可避だとしても、最初の縮小で何を、どれぐらい縮小するか。市場金利に直接影響する米国債を避けてMBS(住宅ローン担保証券)の買入枠縮小から先に行えばソフトランディングできそうだとか、最初は月間850億ドルの買入枠の中で100億ドルとか50億ドル程度の縮小で様子を見るのではないかなど、予想はいろいろ飛び交っている。もし「縮小開始先延ばし」なら為替に影響はないと思われるが、いざ縮小開始になれば、ソフトランディングを図っても世界経済にどんな影響がどれだけ出て、ドル円レートがどう動くか簡単に予測しがたい。それこそフタを開けてみなければわからないから、マーケットは様子見なのだろう。

 さて、来週中にもオバマ大統領が決断するとみられたFRB次期議長人事は、13日に日経新聞が「有力」と速報したサマーズ元財務長官が15日に自ら辞退してしまい、イエレン氏でほぼ決まりということになってしまった。イエレン氏は現バーナンキ議長の中間派路線を継承するとみられるので、それだけでは為替は動かないとみられる。その人事でFOMCで「縮小延期」になれば、為替はほとんど動かないだろう。「縮小開始」ならリスク回避の円買いで円高に振れる可能性がある。日経平均に当てはめると「縮小延期」だと今週の終値の変動レンジ14205~14425円から大きくそれることはないが、「縮小開始」だと下方向に最大で500円ぐらいの幅をみておいたほうがいいだろう。

 一方、オリンピック東京決定によるポジティブ・サプライズ効果は、それだけでは日経平均を15000円よりも上まで押し上げる力は足りないことが、今週後半の値動きのバタバタぶりで証明された。「世紀の祭典」も、膨脹した裁定買い残や信用買い残、悪化した需給には勝てない。9月8日早朝の歓喜は5月23日の悪夢に勝てないのだ。株式市場に対して即効性のある効果は、今週でほぼ売り切れてしまったのではないだろうか。

 ということで、FOMCで量的緩和の縮小が開始され、FRB次期議長人事はイエレン氏で決定的と仮定すると、来週の日経平均は一進一退を繰り返し、終値の変動レンジは13700~14500円とみる。縮小開始決定直後は急落して14000円割れ覚悟だ。(編集担当:寺尾淳)