NYダウは127ドル高で15200ドル台寸前に。アメリカは問題の解決を国連安保理にゆだねてシリア攻撃回避の観測が強まり、金、原油の先物価格は大幅下落。投資家心理はリスクオンして売買高も急増した。中国の鉱工業生産などの経済指標改善も好材料。アップルが新型iPhoneをお披露目し、アメリカの本体価格はメモリー16Gタイプで上位機種「5s」が199ドル、廉価版「5c」が99ドル。日米で20日に同時発売され、NTTドコモ<9437>からも発売される。「あの日」からアメリカは12年、日本は2年半の11日朝方の為替レートは、ドル円は100円台前半、ユーロ円は133円台前半で、前日夕方から円高が大きく進行していた。
取引時間前発表の7~9月の法人企業景気予測調査は、大企業全産業の景況判断指数+12.0で前期から6.1ポイントの大幅改善で次期見通しは+9.8だった。日経平均は88.38円高の14511.74円と14500円台に乗せて始まる。すぐ割り込むがマイナスまでは下がらない。午前10時9分に14447円をつけた直後から8分間で105円急騰して10時17分に14552円まで上がり、円安も進行した。何が起きたかというとオバマ大統領が国民向けテレビ演説で「米軍のシリア投入はない」と明言し、ノーベル平和賞受賞者が宣戦布告する皮肉な事態が遠のいた。その後は14500円台を割ることなく今週の傾向「安定して小動き」の時間帯が続く。後場もずっと14500円台を維持していたが、午後2時30分頃に突然の下落開始。ズルズル下げていき14500円を割り込みTOPIXはマイナスに。裁定売りで急落する「SQ週の魔の水曜日」は、オリンピックでも魔除けにならず律儀にやって来てオバマ演説効果を吹き飛ばす。大引け直前にはマイナスまで下げたが終値は1.71円高の14425.07円。会計帳簿の「備忘価格」を思わせる1円高で日経平均はカスカスの3日続伸。TOPIXは-0.97の1189.25でマイナスだった。売買高は34億株、売買代金は2兆2573億円で商いは前日を下回った。
値上がり銘柄758より値下がり銘柄883のほうが多く、業種別騰落率も14対19でマイナス優勢。プラスのセクターはその他金融、電気・ガス、機械、パルプ・紙、輸送用機器、証券など。マイナスのセクターは鉱業、倉庫、海運、建設、陸運、鉄鋼と、前日まで五輪関連で買われた業種がこの日は売られていた。
日経平均寄与度プラス1位はソフトバンク<9983>、2位はKDDI<9433>とiPhoneの先輩組が入って合計+25円。マイナスの1位は4日続落の信越化学<4063>と、前回の東京五輪で代々木の選手村を警備した実績があり前日は年初来高値だったセコム<9735>で合計-12円。ファーストリテイリング<9983>は「SQ週の魔の水曜日」の毒気に当たり、大引け間際に大幅高から値動きなしまで1000円近くも急落した。
大手金融関連はみずほ<8411>1円安、三菱UFJ<8306>3円安、三井住友FG<8316>15円高、野村HD<8604>5円高とまちまち。自動車大手は役員が「配当性向30%を目指す」と表明したトヨタ<7203>が40円高、マツダ<7261>が11円高、富士重工<7270>が65円高と堅調だった。デジタル一眼レフの開発を休止してミラーレスに集中すると報じられたオリンパス<7733>は好感され61円高。中国の好調な生産、消費指標を受けてコマツ<6301>は65円高、日立建機<6305>は115円高と続伸。建機は国内でも建設需要の追い風を受ける。
建設セクターはちょっとひと休み。淺沼組<1852>が値上がり率1位に入り、年初来高値更新ラッシュはまだおさまらないが、「01番銘柄」で代表格の大成建設<1801>は24円安、業績不振で長く「三井住友の〃鬼っ子〃」扱いされながら前日6億株も売買され人気を博した三井住友建設<1812>も5円安。それでも大成建設は売買代金1位、三井住友建設は売買高1位に入る。株式新聞が五輪関連注目銘柄に挙げた大日本塗料<4611>は13円高で値上がり率8位、神東塗料<4615>も31円高で値上がり率2位になった。帝国ホテル<9708>とともにロイヤルホテル<9713>も26円高でストップ高になり、競技施設が集中するお台場のフジHD<4676>が買われたり、そのお台場カジノ計画でセガサミー<6460>やオーイズミ<6428>など関連銘柄が大幅高になるなど、五輪関連銘柄物色はそのウイングをひろげていた。
農薬メーカーのイハラケミカル<4989>は純利益32%増という第3四半期決算を発表し13円高で4日続伸。後場に15期ぶりの復配を発表した兼松<8020>は急騰して16円高になり値上がり率3位に入った。5~7月期の純利益が過去最高を更新したと発表したジャスダックのテンポスバスターズ<2751>も株価を上げていた。
この日の主役はやはり「アップル関連銘柄」。iPhoneをNTTドコモも扱って廉価版も発売されれば、日本のスマホのシェアはアップル一人勝ちになりそうだ。部品を供給する関連銘柄でプラスだったのは12円高で年初来高値を更新したフォスター電機<6794>ぐらい。他はことごとくマイナスで、すでに織り込み済みなのか、アップルの株価がマイナスだったためか。NTTドコモは年初来高値を更新しながら後場はマイナスに転落したが、MNPでシェアを侵食されそうでもソフトバンクは140円高、KDDIは110円高と元気だ。NTTドコモに〃当て馬〃にされたソニー<6758>は6円安、シャープ<6753>は3円安、富士通<6702>は1円安だった。アップル・ブランドの威力の前に「冬商戦スリートップ」は瓦解してしまうのだろうか。(編集担当:寺尾淳)