メルセデス・ベンツの「シタン」というクルマをご存知の方は少ないのではないか。これは、ルノー・カングーをベースにフロントマスクをメルセデス仕様としたれっきとしたメルセデス・ベンツのモデルだ。ボディも含め、メカニズムの多くはカングーから流用している。これはルノー・日産<7201>アライアンスとダイムラーの提携の賜物である。因みに、この「シタン」は日本においては未発売である。
ルノー・日産アライアンスとダイムラーの両CEOは、フランクフルトにおいて、現在、両社のパートナーシップが急速に進展しており、協業の範囲がますますグローバルになってきていると述べている。
日産、ルノー、ダイムラーのパートナーシップは、2010年4月に締結し、主に欧州に焦点を置いた3つのプロジェクトを柱として開始した。それが現在は、北米や日本での主要なイニシアティブを含む10の重要プロジェクトに拡大している。
両社はパートナーシップからのメリットを享受している良い例として、デカード(米テネシー州)でのメルセデス・ベンツの4気筒ガソリンエンジンの共同生産を挙げている。同エンジンの工場建屋は、12年5月の着工後わずか1年半で完成しました。現在は生産設備の設置を行っており、14年半ばには生産が開始される予定だ。デカード工場で生産されるこのエンジンは、タスカルーサ(米アラバマ州)のダイムラーの工場で生産されるメルセデス・ベンツCクラスおよび新型インフィニティ(日産の高級ブランド)モデルに搭載するという。
また、ターボチャージャー付直噴3気筒・4気筒ガソリンエンジンファミリーの共同開発も進んでいるという。このエンジンは最新の技術を採用し、燃費も大きく向上する予定としている。
共同エンジン開発におけるもう一つの例が、今年の春にジュネーブで公開し、この秋に発売予定のインフィニティ「Q50」である。これは、ダイムラーの協力の基、ディーゼルエンジンとオートマチックトランスミッションを組み合わせたパワートレインを搭載する初めてのインフィニティモデル。
メルセデス・ベンツ「シタン」など両社の協業から生まれたモデルはすでに発売されている。また、インフィニティは、15年からダイムラーのコンパクトモデルの構成部品を使った車両を同年より発売する。構成部品は、インフィニティブランドを具現すべく活用するという。
自動車メーカー同士の提携というのは、当然彼らにとってメリットが大きいので行われるのだが、ユーザーから見ると、必ずしも歓迎はできないのではないか。その理由のひとつとしてブランド・イメージの失墜がある。
スリーポインテッドスター(メルセデスのマーク)を付けたルノー・カングーに、どう考えてもメルセデスオーナーは乗りたいとは思わないだろう。メルセデスベンツ日本もそれを知っているからこそ、日本では発売しないのである。(編集担当:久保田雄城)