ステレオカメラだけで独自の衝突回避安全システム「EyeSight」を構築した富士重が、10月に東京で開催された「第20回ITS世界会議 東京2013」で、次世代EyeSightを標榜する「協調型安全運転支援システム」を出展して話題を集めた。
今回提示したシステムは、現行販売されている運転支援システム「EyeSight ver.2」をベースに開発した。これはASV(アドバンスド・セーフティ・ビークル:通信利用型先進安全自動車)が備える予定の“クルマ・クルマ間通信”“歩行者・クルマ間通信”を使って他車や歩行者を認識して、見通しが悪い状況でも事故を防ぐ「協調型自動運転技術」だ。
そもそも富士重の「EyeSight」は、高価になりがちなレーダーなどを使わずにステレオカメラだけで、歩行者、自転車をも対象としたプリクラッシュセーフティ機能だ。加えて、全車速域で先行するクルマを自動で追従するクルーズコントロール機能を実現したシステムでもある。2008年5月の日本発売以来、高い評価を受けている衝突回避装置だ。
その「EyeSight」を装備した同社のレガシィやアウトバックが、アメリカのIIHS(道路安全保険協会)が初めて実施した前面衝突予防性能を評価する新試験プログラムで、最高評価の「superior」を獲得。なお「superior」評価を獲得した複数のモデルの中でレガシィとアウトバックは最高得点の6ポイントを獲得した。今回のIIHSに試験によって、自動ブレーキによって車両を減速・停止させ、前面衝突の回避・衝突被害の軽減を図る「EyeSight」の「性能が高く評価されたわけだ。
今回実施されたIIHSの試験は、前面衝突予防システムをオプションまたは標準装備するクルマを自動ブレーキ機能などの検証し、衝突回避性能を「superior」「advanced」「basic」の3段階で評価。試験では、自動車の後部を模し、かつ静止したターゲットに向けて車両を走らせ(試験速度2種:約20km/h、約40km/h)自動ブレーキによる減速性能を検証した。最高評価である「superior」の認定を受けるには、自動ブレーキ試験で4~5ポイントを獲得し、前面衝突警報付車両の1ポイントの加算を含め、総合5ポイント以上(最高6ポイント)が必要とされる。富士重がITS世界会議で提案した技術は、この「EyeSight」を進化させたプリクラッシュセーフティ/アクティブセーフティ技術である。
富士重が9月末に発表したデータによると、クルマの国内生産が低迷(1〜8月期累計前年比87.2%:自販連調べ)する中で、今年1〜8月の登録車生産台数が前年比117.8%を記録。同期間の国内販売は133.8%の前年比を記録した。富士重では、安全技術に対する一般消費者の評価が販売に結び付いた結果だとしている。(編集担当:吉田恒)