2013年3月に、総合マーケティング会社の富士経済がまとめた、世界のハイブリッド自動車(HV)関連市場の2030年までの市場予測の発表によると、HVの世界市場は、2012年が160万台で、11年比1.8倍となっているが、2030年にはさらに12年比5.4倍となる863万台に達する見通しを立てている。
この市場で現在、主導権を握っているのは日系メーカーだが、欧米系メーカーもHV化を躍起になって推進しており、2030年頃には各国の自動車総販売台数において、欧州20.1%、北米18.2%を占めるまでHVのシェアが拡大すると予測されている。
トヨタ自動車<7203>のプリウスやアクアは依然として人気が高いものの、米国市場においては、2012年後半からフォードC-MAXやフュージョンが、プリウスからシェアを奪う相当な追い上げを見せており、今年度以降はGMなども、このシェア争いに加わってくると見られている。
そんな中、日本メーカーで唯一、アメリカでの売り上げを4年連続でアップさせている企業が、業界8位の富士重工業<7270>の自動車ブランド・スバルだ。円高や中国不安で日本の各メーカーが苦しんでいた時期でも、スバルは過去最高の伸びを記録。前年同期比43.0%増の276千台を記録している。また、2013年3月期は世界での販売台数、売上高ともに過去最高に達し、スバルの工場ではフル稼働の状態が続いているという。
この奇妙な現象のキーワードは「オリジナル路線」。あえて他とは違う、オリジナルの道を選択したことが、この異例ともいえる人気ぶりの理由だ。
スバルで今、最も注目されているのが、同社が20年越しで世に送り出したハイテク運転支援システム「アイサイト」。開発当初の技術では映像をリアルタイムに処理することが困難で、「夢物語」と言われていたという。しかし、スバルでは「ステレオカメラ」の可能性を信じて、地道に20年に渡る開発を続けてきた。そして、2008年に他社にさきがけて低価格で実用化に成功し、今では顧客の7割以上がアイサイトの搭載車を選択するほどの人気商品となっているのだ。
また、スバルは一風変わったコンセプトのハイブリッド車の開発でも話題となっている。 これまでのハイブリッド車は「燃費至上主義」が常識だった。しかし、「SUBARU XV ハイブリッド」は、そんな低燃費至上主義に真っ向から反逆したハイブリッド車で、低燃費を最大の売りにしていない、燃費を追わないエコカーなのだ。
スバルが燃費を犠牲にしてでも守りたかったもの。それは「走りの楽しさ」だ。燃費を上げようと思えば、車本来の走る楽しさは削られていく。たとえば、2WDにすればより軽量になり、燃費アップに繋がるところを、あえて走りや走破性を考慮してAWDを採用しているのだ。
しかし、これがうけて、アメリカでは4年連続で、日本車メーカーでは唯一、売り上げを伸ばしているというのだから、大成功といえるだろう。他社と同じ道を行っても、結局のところ限られたシェアを奪うだけのことになってしまう。HV車という基本ベースは同じでも、独自の視点で開発することが成功につながった。
日本のものづくり復興のカギは、このあたりにあるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)