NYダウは2.18ドル安。一時は140ドルを超える下げから徐々に持ち直し終盤はプラスにもタッチした。S&P500は史上最高値を更新しNASDAQもプラス。下落の主因はIBMの減収決算で、ゴールドマンサックスの総収入も新規失業保険申請件数も市場予測より悪かった。そこから戻せた要因は量的緩和縮小の開始が年を越す観測が出たこと。12月13日までに財政赤字削減策で結論を出す超党派委員会の話し合いは難航が予想され、直後の17、18日のFOMCで緩和縮小を打ち出しづらいという読み。ダラス連銀のフィッシャー総裁は「議会対立が影響し債券購入の縮小を支持する意見が抑えられている」と指摘した。18日朝方の為替レートは、ドル円が98円近辺、ユーロ円が134円近辺で、長期金利低下を背景にドル安が進んでいた。
プラスで終われば2月28日~3月11日以来の8日続伸で今週は全勝になる日経平均は3.09円高の14589.60円で始まるが、すぐにマイナス圏に落ちて小幅安で推移する。しかしTOPIXはしばらくはプラスで「NTねじれ現象」。こんな時は地合いは買い優勢でも利益確定で先物が売られていて、それが一巡すれば反転上昇する。午前9時30分を回るとプラスに切り返し14600円台を回復するが、その後はプラスとマイナスの間を行ったり来たり。11時すぎると再びマイナス圏に沈み、前引けも小幅安だった。
中国の経済統計の発表が多く、7~9月期の国内総生産(GDP)成長率は+7.8%で市場予測の+7.7%を上回り、3四半期ぶりの拡大で景況持ち直しを裏付ける。9月の鉱工業生産は10.2%増で市場予測通り、9月の小売売上高は13.3%増で市場予想を下回った。後場の日経平均は50円安以内の水準でもみあった後、午後1時20分すぎから14500円割れ寸前まで急落する。やはり利益確定売りの金曜日かと思われたが、V字回復して2時台はおおむね30円安近辺の水準で推移。2時40分頃からTOPIXがプラスになり「最後の大逆転」の雰囲気を演出。プラスまであと数十銭まで迫ったが、結局終値は24.97円安の14561.54円で8日続伸ならず。3勝1敗、先週末から156.80円上昇して今週の取引を終えた。前週の上昇幅380円の半分以下で、アメリカの財政問題が解決しても、その前の連騰で織り込み済み。TOPIXは-0.73の1205.52で惜しくもマイナス。売買高は20億株、売買代金は1兆6078億円で、2兆円に一度も届かず薄商いが極まった週だった。
値下がり銘柄769より値上がり銘柄826のほうが多いが、業種別騰落率は15対18で下落優勢。プラスセクターの上位は海運、不動産、金属製品、石油・石炭、陸運、建設など。マイナスセクターの下位は保険、ゴム製品、空運、鉄鋼、証券、パルプ・紙などだった。
日経平均プラス寄与度上位の顔ぶれは新鮮。+8円の1位はユーロ高の恩恵を受けるダイキン<6367>で、東京五輪の空調需要を開拓する営業部隊を発足させたと報じられ220円高で年初来高値更新。+3円で2位のアドバンテスト<6857>は42円高、+3円で3位の東京エレクトロン<8035>は80円高で、57円高で値上がり率12位のSUMCO<3436>とともにアメリカ半導体関連株のSOX指数の上昇を受けて買われていた。マイナス寄与度のほうは「御三家」が1、2、7位に入り合計-23円と足を引っ張っていた。
メガバンクにレーティングがつき、三井住友FG<8316>はメリルリンチ日本証券が買い推奨を出して前場から買いを集め20円高。三菱UFJ<8306>はSMBC日興証券がレーティングを引き上たが1円高だった。みずほ<8411>は1円安。自動車は、来年4月にエコカー減税を拡大しても、自動車取得税廃止の代わりに自動車税、軽自動車税を増税して地方財源を確保すると報じられて株価がふるわず、トヨタ<7203>は60円安。ホンダ<7267>は10円安。マツダ<7261>は1円安。それでも富士重工<7270>は25円高だった。新税制で割りを食うのは軽自動車だが、なぜかスズキ<7269>は17円高、ダイハツ<7262>は7円高だった。
ソニー<6758>は投資ファンドのサードポイントがエンタメ事業の分離提案を一時保留にすると表明して8円安。シャープ<6753>は亀山工場でIGZO液晶を増産するという材料があり3円上昇して売買高1位になっていた。日本電産コパル電子<6883>は通期の営業利益を18.5%、純利益を29%上方修正し、44円高で年初来高値を更新し値上がり率7位に入っていた。子会社のシステム運用事業を切り離し130億円で日立<6501>に売却すると発表した東京電力<9501>は8円安。2円安の日立は経団連副会長の川村隆会長が政労使会議に出席し「ベアも選択肢の一つ」と明言した。政府が賃上げを促す中、2007年以来のベアが実現するだろうか。
227億円分のCBの繰り上げ償還を発表したKDDI<9433>は60円安。同じく171億円分の沢井製薬<4555>はSMBC日興証券が目標株価を引き上げたが160円安だった。
クレディスイス証券がセクター判断を引き下げた鉄鋼セクターはJFEHD<5411>が70円安。新日鐵住金<5401>も5円安と売られた。三菱重工<7011>は売買高5位、売買代金4位と買いを集め終値23円高で7月以来の高値になった。ブリヂストン<5108>は、ゴールドマンサックス証券が中期経営計画を「物足りない内容」と述べて55円安に。資生堂<4911>は9月中間決算の業績予想を発表し、営業利益は上方修正、純利益は下方修正。ロレアルとフランスの子会社売却で協議中で300億円を提示されたニュースもあり微妙な値動きの末、2円安で終えた。
JR東海<9022>は、リニア中央新幹線の名古屋・大阪間建設への国費投入、完成時期前倒しについて前日、山田佳臣社長が「国が用意するなら検討もやぶさかでない」と述べ、財務負担軽減を好感され30円高。この報道を材料に鉄建<1815>が38円高で値上がり率4位、売買高10位、熊谷組<1861>が18円高で値上がり率8位、売買高9位、大豊建設<1822>が42円高で値上がり率2位と買われた。トンネル工事用の掘削機を製造するラサ工業<4022>は28円高で値上がり率3位、売買高6位だったが、路線はトンネルと大深度地下ばかりなので、カネをいくら注ぎ込んでも工期はあまり短縮できないという。
この日の主役はJR東日本<9020>で150円高の大幅上昇。BNPパリバが東京五輪に向けた東京の不動産市場の拡大で恩恵を受ける銘柄として買い推奨を出した。三菱地所<8802>、三井不動産<8801>は投資判断「買い」で調査を開始するという言い回し。44円高の三菱地所は丸の内地区、35円高の三井不動産は日本橋地区の再開発、JR東日本は品川駅・田町車両センター再開発が着目された。東京五輪に合わせて山手・京浜東北線の新駅も開業するこの地区は、国が2011年12月に国際戦略総合特区「アジアヘッドクォーター特区」に指定して外国企業の誘致を図ろうとしている。新幹線の駅があり羽田空港から近くリニア始発駅もできる「シナガワ」は今後、国際的な知名度が上がりそうだ。(編集担当:寺尾淳)