【日経平均】17億株のお盆並み薄商いでも25円高6日続伸

2013年10月16日 20:39

 NYダウは5日ぶり反落の133ドル安。共和党は債務上限を臨時に2月まで引き上げる修正案に「オバマケアがそのままだ」と反発してゴネて、期待感が失望感に変わって大幅安。デッドラインの17日をすぎても数週間は財政をやりくりして米国債の利払いや償還はできるという。最後の最後は007映画で有名になったケンタッキー州フォートノックスで保管する金地金の売却という手もある。7~9月期決算を発表したジョンソン・エンド・ジョンソンは利益が市場予測を上回り上昇、シティグループは下回り下落。16日朝方の為替レートは、ドル円が98円台前半、ユーロ円が132円台前半で円高が進行した。

 取引開始前にフィッチの米国債格下げの可能性言及とアメリカで財政協議再開のニュースが入って日経平均は7.90円安の14433.64円と小幅安で始まる。午前9時12分に14493円まで上昇した後に約15分でマイナスまで下落する値動きを見せた後は、おおむね小幅高水準で推移しマイナスは一時的だったが、前場終了前に下落し前引けは23円安。後場は一転、プラスで始まり30円程度の幅の小動きが続いたが、午後2時30分前にはマイナス圏まで下げる。さすがに3月以来の6日続伸はないかと思われたが、前日同様に大引け前の急伸で終値は25.60円高の14467.14円。TOPIXは-0.69の1196.78で僅差のマイナス。売買高は17億株で、もし売買高ランキング1位のシャープ<6753>の2.3億株がなければ、お盆明けの8月19日に記録した今年最低のの14億株に迫っていた。売買代金は1兆3802億円だった。

 値上がり銘柄628より値下がり銘柄974のほうが約1.5倍も多く、業種別騰落率も13対19でマイナス優勢(変わらず1)。値上がりセクター上位は保険、石油・石炭、パルプ・紙、空運、ゴム製品、不動産など。値下がりセクター下位はその他金融、電気・ガス、鉱業、海運、卸売、ガラス・土石などだった。

 日経平均採用225種のほうはプラス108、マイナス102でわずかにプラス優勢で、それが終値に反映された。プラス寄与度1、2位はソフトバンク<9984>とファナック<6954>の合計+25円で、マイナス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>の-13円という「御三家の綱引き大会」だった。

 メガバンクは2円高のみずほ<8411>だけプラス。地銀の大分銀行<8392>が突然変異のように18円高で値上がり率12位に入ったが、今期の業績見通しを大幅に上方修正したためで、9月中間期の経常利益は前年の2.1倍の「倍返し」。自動車はトヨタ<7203>も富士重工<7270>もマツダ<7261>も日産<7201>もマイナスで、トヨタ、日産に続き日本勢で3番目の自動運転車を公開したホンダ<7267>も15円安だった。

 東京海上HD<8766>は全額出資の生命保険子会社2社を来年10月に合併させると報じられ95円高。医療保険などを販売する東京海上日動あんしん生命保険が東京海上日動フィナンシャル生命保険を吸収合併して契約を引き継ぎ、コスト削減効果が出るという。連想買いでMS&ADHD<8725>は80円高、NKSJHD<8630>は68円高、T&DHD<8795>は17円高になり、地味な保険セクターを業種別騰落率トップに押し上げた。

 ガラにもなく派手だったのがシャープで、この日は公募増資、売出で発行した株式の受渡日。受け取って直ちに売る株主が多く前場はマイナスに沈んだが、大きな需給イベントは通過したことで後場は上げ幅を拡大して大引け直前に一瞬300円にタッチし終値は299円で、13円高で値上がり率14位に入った。あわてる株主はもらいが少ない。売買代金は688億円で1位ソフトバンクに26億円差に迫る2位だった。日本製紙<3863>は63円高で値上がり率16位に入り、前日の王子HD<3861>に続き紙パ業界は日替わりヒーロー状態。釣具のグローブライド<7990>は12円高で値上がり率6位に入り、売買高7位と買われた。連日のランキング入りで「特定資金」にとっては潮回りが良く入れ食い状態か。消費増税に合わせてたばこの値上げを検討と報じられたJT<2914>は70円安で売買代金3位と売り浴びせられた。

 日経新聞朝刊が「外食大手がアジアで食材の安定供給体制を整え店舗展開を加速」と報じ、台湾に加工拠点を設け2014年から牛丼の「すき家」を出店するゼンショー<7550>も、タイに食材工場を新設し5年でアジアの店舗数を今の20倍の450に増やす焼肉の「牛角」のコロワイド<7616>も、ともに3円高。食材が牛肉だけに事業意欲の「アニマル・スピリット」は旺盛。ヤマダ電機<9831>は、当初は黒字予想だった今期の最終損益が上場以来初の赤字に転落するという業績見通しを発表したが、同時発表の自社株買いが好感され7円高。公募増資だけでなく悪化した業績発表にも、合わせて飲めば効く薬らしい。店をウロウロするだけでスマホに自動的にポイントがつくという「スマポ」サービスを運営するスポットライトの買収を発表した楽天<4755>は16円高。ネット会員を実店舗に誘導する「O2O」に役立てるという。

 この日の主役はソフトバンク。前日にスマホゲーム大手のフィンランドのスーパーセル社をガンホー<3765>とともに買収すると発表。さらに日経新聞は、アメリカで通信企業にスマホなど携帯端末を卸すブライトスター社の買収が最終段階と報じた。買収額は合計約2500億円で、216億ドル(当時1兆8000億円)だったスプリント・ネクステルの買収より1ケタ小さく財務への影響は軽いとみられ、素直に好感されて160円高だった。

 スーパーセル社の有力コンテンツを獲得して海外販売のパイプも太くなり、ガンホーの世界展開にメリットありと見込まれて株価は一時ストップ高の11000円高。ニュースの影響はスマホ向けで急成長した他のゲーム関連新勢力の株価にも波及し、コロプラ<3668>は130円安、Klab<3656>は69円安で値下がり率3位だった。ガンホーにとって、ソフトバンクという親の光は七光り、か。(編集担当:寺尾淳)