【日経平均】ワシントンで事態が動き出して210円高

2013年10月11日 20:28

 NYダウは323ドルの大幅高で15000ドル台回復。ベイナー下院議長(共和党)が「6週間限定の債務上限引き上げ案」を提案。デッドラインの先延ばし策で暫定予算案にもオバマケアにも触れていないが、事態が動き出したのは確かで、市場は財政問題解決への期待を今年最大の上昇幅で示した。しかしオバマ大統領はすぐには提案に合意せず引き続き協議。ドル高・円安が急進し、11日朝方の為替レートはドル円が98円台前半、ユーロ円が132円台後半になった。

 ノーベル文学賞はカナダのアリス・マンロー氏が受賞し、村上春樹氏は受賞を逃した。残りは平和賞と経済学賞だが、日本人や日本の団体の受賞は望み薄。NYダウの大幅高と円安進行を受けマイナーSQの日の日経平均は182.18円高の14376.89円で始まった。午前9時6分に出たSQ値は14349.65円と高く、前場はその前後の水準の小動きが続く。午前10時30分すぎから14400円ラインに接近し、前引けは14381円だった。

 昼休み、G20財務相・中央銀行総裁会議でアメリカのルー財務長官とバーナンキFRB議長が「17日までに債務上限をめぐる対立は解消するだろう」と説明したという速報が入り、後場はいきなり日経平均は14400円台、TOPIXは1200の大台に乗せてスタート。TOPIXはなかなか定着しないが日経平均はしっかり定着。しかし午後1時45分頃から14400円を割り込んで朝のSQ値13349円を下回る水準まで下落する。やはり3連休前の金曜日は利益確定売りがきついかと思われたが、大引け前の約20分間で14400円台を回復し、4日続伸し210.03円高の14404.74円で、4勝1敗、前週末から380.43円上昇して今週の取引を終えた。だがTOPIXは+19.22の1197.17で1200台で終われなかった。売買高は24億株、売買代金は2兆2708億円で、SQの日だが6日ぶりに2兆円台を回復した。

 値上がり銘柄は1547で東証1部全体の88%を占め、値下がり銘柄は162。全33セクターがプラスになり、上位はその他金融、パルプ・紙、鉄鋼、ゴム製品、銀行、機械など。下位は石油・石炭、空運、電気・ガス、食料品、医薬品、水産・農林などだった。

 日経平均は225種の中で207銘柄が上昇する全面高で、値下がりは16だけ。プラス寄与度の1位は720円高のファナック<6954>、2位は野村證券が目標株価を引き上げて160円高のソフトバンク<9984>で、合わせて日経平均を47円押し上げた。

 前日はふるわなかったメガバンクは全てプラスで三菱UFJ<8306>は2.42%上昇。信託銀行の三井住友トラスト<8309>が26円高と買われた。証券大手は野村HD<8604>11円高、大和証券G<8601>22円高と好調。中国の大手金融2社と提携し上海ではオンライン金融に参入するSBIHD<8473>は62円高だった。高速道路の自動運転システムを開発したトヨタ<7203>は60円高。実用化は数年先とみられる。

 シャープ<6753>は公募増資による下落が尾を引き6円安で値下がり率17位。NEC<6701>は「ビッグローブ」売却が伝えられ4円安。パソコン通信「PC-VAN」以来の個人向けネットサービスを手放し、社会インフラ事業に集中する。ヤフー<4689>は13円安で、出店無料の新戦略発表以来これで4日間プラスなし。その連結子会社のバリューコマース<2491>は117円高で年初来高値を更新し値上がり率9位に入った。

 キヤノン<7751>はデジカメ不振で1~9月期の営業利益が2%減という業績観測記事が出て10円安。ニコン<7731>は野村證券がレーティングを引き上げて73円高になった。東京エレクトロン<8035>はBNPパリバがレーティングを引き上げ140円高。情報処理業の電算システム<3630>は2時にNTTドコモ<9437>との業務提携を発表すると急伸しストップ高の300円高で値上がり率ランキング1位に躍り出た。この日6円高のドコモと、グーグルのクラウドビジネスに関し戦略的パートナーを組むという。

 22円高の吉野家HD<9861>は8月中間期の純利益が29%減で「はなまるうどん」の営業利益が牛丼店のそれを上回った。ホームセンターのコーナン商事<7516>は役員のスキャンダルが発覚し予定していた8月中間期の決算発表を延期。52円安で年初来安値を更新し値下がり率2位に入った。

 カジノ関連がテーマ物色され、日本金銭機械<6418>は199円高で値上がり率6位、オーイズミ<6428>は91円高で同11位と買われた。成長戦略にはなれなかったが、15日に召集される臨時国会で超党派の議員連盟がカジノ解禁関連法案を提出するという。

 新興市場のゲーム新勢力はガンホー<3765>が1300円高と買われたが、高値圏のコロプラ<3668>は9月期決算の営業利益が55億円で前期比3.7倍と報じられても15円安。韓国発祥のネクソン<3659>は大和証券がレーティング継続で19円高。ミドリムシのユーグレナ<2931>は石垣島産のミドリムシを配合したヨーグルトを伊藤忠商事<8001>の協力で発売するという材料があり5円高。伊藤忠は25円高だった。

 ノーベル賞を逃すとマーケットが手のひらを返すのは文学賞も変わりなく、値下がり率ランキングでは書店の丸善CHI<3159>が23円安で1位、出版社のKADOKAWA<9477>が160円安で3位。村上春樹氏の出身地の芦屋市を通る私鉄株の阪急阪神HD<9042>は14円高と上昇していた。

 SQの日の主役は、前日大引け後に8月期本決算を発表した日経平均御三家筆頭のファーストリテイリング<9983>。取引開始から売り気配を続けてSQ値の算出を遅らせる大物ぶりを発揮。値がつくと日経平均マイナス寄与度ダントツトップになり、船のイカリのように日経平均の重しになってその動きを抑え続けた。終値は1100円の4ケタ安で値下がり率5位。寄与度は-43円だった。

 前夜は「1兆円企業に」と一般ニュースになっていたが、本決算は突っ込みどころ満載。前期の営業利益は国内ユニクロの販促費がかさんで会社計画を下回り、今期の業績見通しは売上高は16.4%増収でも営業利益は市場予測に届かず、これが株価下落の元凶に。国内は退店が多く純増は13店舗だけ。既存店売上高の伸びは前期実績の7.3%に対し1.6%と低めで、この先もし、暖冬がくるなど歯車が狂えばマイナス転落も覚悟だ。利幅の薄い「ジーユー」の積極出店も懸念材料。消費増税後の国内の落ち込みをカバーするには東南アジアなど海外の大量出店で勝負をかけなければならず、柳井正社長も65歳で隠居などしていられないのか、引退を撤回した。(編集担当:寺尾淳)