2014年9月、ユーロ圏では現在の排気ガス規制「ユーロ5」(2009年9月施行)から「ユーロ6」に強化される。また、2012年から「CO2排出規制」が施行されている。このあたりの詳しい解説は改めるが、欧州メーカーがここのところ相次いでプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)発表・導入を積極化している理由はここにありそうだ。クルマのCO2平均排出量を減らすには、EVやPHVを積極的に販売して台数を稼ぐことで1台あたりの平均値を低減する。こうすることで、高価で利益の大きい高出力エンジン搭載のスポーツラグジュアリーモデルを販売することが可能となるわけだ。
だから、ここで紹介する「アウディA3スポーツバックe-torn」が、そうしたクルマだというワケではない。同モデルは欧州で2014年中に発売されるPHVだ。
アウディA3はフォルクスワーゲン(VW)グループでVWゴルフとプラットフォームを共用するCセグメントに位置する。そのボディサイズは全長×全幅×全高4310×1785×1424mm、ホイールベース2630mm。34kgの駆動用モーター、125kgの駆動用電池、それらを制御する10kgのパワーマネージメントシステム、そして1.4リッターTFSIエンジンと40リッターのガソリンタンクを搭載しながら、車重は1574kgに抑えている。
ハイブリッドシステムのマネージメントはモーター協調型。中負荷まではモーターがオルタネーターとして稼働してエネルギーを回生し、駆動用電池に蓄える。A3 e-tornは、ほぼスタートは電気だけで行なう。モーターの太いトルクで0-60km/h加速を4.9秒で実現するという。また、モーターだけのEV走行は航続50kmまで可能で、その場合の最高速度は130km/hだ。これ以上の速度も出せるが、効率があまりよろしくないらしい。
1.4リッターTFSIターボエンジンは150hp(110kW)のパワーと250Nm(25.5kg.m)の最大トルクを1750-4000rpmの幅広い回転域で発生する。電気モーターと協調してシステム全体として204hp(150kW)のパワーと350Nm(35.7kg.m)のトルクを得たドライバビリティの高そうなパワーユニットだ。
A3 e-tronには業務用プラグ(いわゆる充電スタンドなどの急速充電器)と家庭用プラグが付属した2つの充電ケーブルが付属するという。前者が2時間強、後者が3時間45分でフル充電可能だ。
アウディはこのA3 e-tronをEUで何台売るつもりなのか発表していない。冒頭で記した、超スポーティモデルや大型でラグジュアリーなSUVを作り続けるには、数万台規模で販売したいモデルだろうと思える。(編集担当:吉田恒)