ここ1~2年、「スマートハウス」をテーマに訴求を行なうハウスメーカーは多い。大手だけでなく工務店レベルでもハードルを下げながらもテーマに掲げている。また、異業種である電力会社、ガス会社、家電、自動車メーカー等の参入例もある。
これまで「スマートハウス」という言葉の広義の解釈は、HEMS(Home Energy Management System)と呼ぶ住宅エネルギー管理システム全般を指す。有線・無線LANなどの「通信技術」による空調や家電のコントロールに加え、太陽光や燃料電池による発電、蓄電、そして売電、電気自動車などを一元管理する住宅だ。が、業種・企業の取り組み分野の違いで細かな方策がそれこそ無数にある。そのため、総合的なコーディネーターの必要性が出てきた。
2013年に注目を集めたのが第43回東京モーターショーの「SMART MOBILITY CITY 2013」で、積水ハウスと東芝、ホンダの3社が次世代「スマートハウス」を合同出展したことだ。業界・業種の枠を超えた新しい試みである。ここで3社は、ITや超小型電気自動車を活用したスマートハウスがエネルギーや情報、モビリティでつながるスマートコミュニティを展示。また、水素を使った住宅用コージェネレーションや燃料電池車が利用される社会の到来ををも見据えた。
積水ハウスは、同社が核となってエネルギー収支「ゼロ」にする住宅を訴求しながら、東芝、ホンダの最新技術を活用して暮らしの中で、どのように繋げていくのかを実証。これまでのHEMSによって得られたデータの活用で、エネルギー制御だけではなく、今後は「居住者の健康管理ツールとしても機能する」ウエラブルセンサーの実証実験を行なうという。
東芝は「水素による電力発電が進む。そこには電力を貯蔵できるシステムが不可欠。特に水素エネルギーに関しては、水素を製造、貯蔵、必要な時に使えるように、蓄電池と組み合わせて使えるようなシステムを作る」とした。
ホンダは新たなモビリティとして超小型電気自動車「MC-ベータ」とロボティクス技術を応用した家庭内移動機器「UNI-CUB ベータ」、体重支持型歩行アシスト機など車イスとは異なる自立型の移動手段を提案していた。加えて、来たるべき水素社会を見据えて、ガレージに燃料電池自動車「FCXクラリティ」を発電機とする給電するシステムを紹介した。
と、ここまでは戸建て住宅の話。しかしながら、ここまで総合的なスマートハウスを建てるコストとパフォーマンスの辻褄合わせは決して楽ではない。そこで東京ガスでは中規模集合住宅で実証実験をしている。
横浜市の「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)」との施策で、同市磯子区で実際に社員住居として2012年4月からスタートした。この実験では通常の集合住宅のエネルギー25%削減を目指している。
地下1階、地上4階のRC構造に24戸の住居。省エネ設備は以下のようなシステム構成だ。太陽光利用ガス温水システム(屋上設置型とバルコニー設置型併用)、家庭用燃料電池エネファーム10台、太陽光発電設備(25kW)などだ。エネファームは4戸で2台をシェアすることで効率化を図り、RC構造の外断熱などでも省エネを目指している。現在まで大手ディベロッパーが販売する都心のマンションで、こうした話題はあまり聞かない。今後の大きなニーズとして集合住宅のスマートハウスが求められるはずだ。
東京ガスの取り組みは、この横浜市だけでない。首都圏8カ所で集合住宅以上の病院や街区など大規模なスマートエネルギーの実証実験が進められている。(編集担当:吉田恒)