ここ数年、「スマートハウス」をテーマに訴求を行なうハウスメーカーや電機メーカー、自動車メーカーが増加している。これまで「スマートハウス」の解釈の多くは、HEMS(Home Energy Management System)と呼ぶ家庭のエネルギー管理システム全般を指している。空調や家電、有線・無線LANなどの通信機器周辺技術、発電・蓄電・売電、自動車などを一元管理する住宅といえる。現在までのスマートハウスの概念はこのとおりだ。が、企業ごとの取り組み分野の違いが大きく、トータルソリューションとして未達の部分が多かったのも事実だ。
今回、第43回東京モーターショー会場での「SMART MOBILITY CITY 2013」で、積水ハウス<1928>と東芝<6502>、ホンダ<7267>の3社が最新の次世代「スマートハウス」を合同で提案した展示は、そうした業界の枠を取り払った新しい試みである。
今回の展示では、ITやパーソナルモビリティを活用したスマートハウスがエネルギーや情報、モビリティでつながるスマートコミュニティとして成立。加えて、水素を使った住宅用コージェネレーションや燃料電池電気自動車が利用される社会の到来をも見据えている。
ハウスメーカーである積水ハウスは、同社が核となってエネルギー収支「ゼロ」にする住宅を訴求し、東芝、ホンダの最新技術を活用して暮らしの中で、どのように繋げていくのかを実証しながら、近未来の「SLOW & SMART」な暮らしを提案。また、スマートハウスの概念を拡大してスマートヘルスケアの分野で実験をスタートさせたことを発表した。
積水ハウスの阿部俊則社長は「これまでのHEMSによって得られたデータの活用で、エネルギー制御だけではなく、健康管理のツールとしても十分機能する」として同社が実証実験を開始するウエラブルセンサーを挙げた。これは肌に直接つけ、ユーザーの心拍数などのデータを得てリアルタイムでスマートフォンやパソコンなどで閲覧可能とする。「得たデータを蓄積し、ヘルスケアサポートサービスを確立する」という。加えて、「この健康管理からスタート、データをクラウドに集結。今後は、積水ハウスが目指すスマートハウスのサービスプラットフォームを構築する」と説明した。
東芝は、クラウドに繋がることで実現する便利で快適なサービスにより、新たな暮らしを提案するソリューションを紹介。再生可能エネルギーの安定供給やEV(電気自動車)の充電・管理など、コミュニティにおける住宅とモビリティのつながりを紹介。また、ホームソリューションとしてスマート家電を展示した。
東芝の田中久雄社長は、「従来の家庭用エネファームに加えて、電力と水素によるエネルギー拡大が進むだろう。それには電力を貯蔵できるシステムが不可欠。特に水素エネルギーに関しては、水素を製造、貯蔵、必要な時に使えるように、蓄電池と組み合わせて使えるようなシステムを作ることで、コミュニティのさらなるスマート化が進むだろう」とした。
自動車メーカーのホンダも今年のCEATECで家庭用ガスエンジン・コージェネレーション・ユニットを核としたスマートホームを既に提案していたが、今回は新たなモビリティとして超小型電気自動車「MC-ベータ」とロボティクス技術を応用した家庭内移動機器「UNI-CUB ベータ」、体重支持型歩行アシスト機を展示。車イスとは異なる自立型の移動手段を提案していた(「UNI-CUB ベータ」については別項で解説する)。加えて、来たるべき水素社会を見据えて、ガレージに燃料電池自動車「FCXクラリティ」を置いて、FCXを発電機として住宅に給電するシステムを紹介した。「今後のモビリティは、住まいと家電の連携を深めて、人の暮らしをより豊かにしていく。安全・便利なのはもちろん、わくわくするような楽しい暮らしを提案したい」とホンダの伊東孝紳社長の言葉は、実にホンダならではと思える発言であった。ただし、「水素社会の到来は、まだまだ勉強の余地を残す」として、燃料電池自動車については、しばらくの猶予が必要としたことが印象的だった。(編集担当:吉田恒)