日本の携帯電話市場は契約件数が日本の総人口を上回り、ほぼ完全な成熟市場。2014年の市場規模は横ばいになるだろうというのが専門家のほぼ一致した見方である。「ガラケー(フューチャーフォン)からスマホへ」という流れも、2013年9月のアップルの新型iPhone発売をめぐる騒ぎを経て、ほぼ一巡した感がある。
IT専門調査会社のIDCジャパンは2013年12月18日に発表した「2014年国内IT市場の主要10項目」の中で、国内の携帯電話総出荷台数に占めるスマホ比率は2014年には約86%に達し、出荷台数の伸びは前年比8%増に鈍化すると予測した上で、「スマホはコモディティ化しつつある」と述べている。携帯キャリアにとっては、ガラケーがスマホに置き変わることによる通信料等の増収効果は2013年ほどは望めないようだ。ただ、IDCはタブレット端末は2014年も前年比20%超のプラス成長になるとみている。その分がどれぐらい契約数に上乗せされるかだが、実際に売れているタブレット端末はWi-Fi接続タイプが主流で、携帯回線の3GやLTEで接続可能なものは少数派なので、あまり期待はできないだろう。
国内の3社による「携帯キャリア三国志」の行方は、三つどもえのまま動きに乏しいと思われる。2013年9月に新型iPhoneを戦列に加え悲願のシェア50%奪還を目指して攻勢に出たNTTドコモ<9437>の野望は頓挫してしまった。7~9月のスマホ出荷台数でシェア54.1%(IDC調べ)とメーカー別では天下を取ってしまったアップルiPhoneの販売シェアを3社で分けあうという「天下三分の計」が、年内に次期新型iPhoneが発売されたとしても続くことだろう。
NTTドコモは「ツートップ」「スリートップ」と称したスマホ機種の「エリート選抜戦略」に失望して国内外の端末メーカーが離反、撤退するという痛手も被ったので、そのリハビリに時間がかかると思われる。可能性がありそうなのがソフトバンク<9984>が契約者数でKDDI<9433>を追い越してシェア第2位に躍り出る日が来ることだが、KDDIも新型iPhoneの販売競争でソフトバンクに善戦するなど防戦に必死なので、2014年中に実現するかどうかは微妙な情勢だ。
だが、国内では第3位に甘んじたとしても、ソフトバンクにはもっと大きな野望がある。2013年7月にスプリントを買収したが、それに続いてアメリカ第4位の携帯キャリアでドイツテレコムの子会社、TモバイルUSの買収に動いている。早くも2013年12月、スプリントが買収して「孫会社化」する話をウォールストリートジャーナルが速報した。もっとも、スプリント買収で競合したディッシュ社も買収に意欲を見せている他、2011年にAT&TによるTモバイルUSの買収計画を反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴してつぶしているアメリカ司法省、連邦通信委員会(FCC)の出方も気になるところ。それでも、もし買収に成功すればソフトバンクグループの年間売上高は約7兆円に達し、中国の中国移動(チャイナ・モバイル)に次ぐ世界第2位の携帯キャリアにのし上がれる。2014年は、世界の携帯キャリア王を目指す孫正義社長の野望の行方からも目が離せない年になりそうだ。