2012年は6月にビックカメラ<3048>がコジマ<7513>を子会社化し、12月にヤマダ電機<9831>がベスト電器<8175>を子会社化するという業界再編に揺れた家電量販店業界だったが、2013年の話題は首位のヤマダに始まりヤマダで終わったと言っても過言ではない。他の上位企業のビックカメラ、エディオン<2730>、ケーズHD<8282>と比べて、ニュースの数は断然多かった。
上半期の「ヤマダ、減収減益ショック」は大きかった。2月の4~12月期決算で予測はついていたが、5月9日の3月期本決算発表で2期連続の減収減益、特に営業利益と最終利益の「61.9%減」という数字を見せられると、家電量販店業界にとって地デジ特需の反動による薄型テレビの低迷がいかに大きいかを思い知らされた。それに先立つ4月30日には16円減配予想とともに、山田昇会長が社長に復帰し一宮忠男社長以下全取締役が降格する人事を発表。そして4月の南京店、6月の天津店の店舗閉鎖の発表は、中国市場に社運を賭けたヤマダ電機の「一つの夢の終わり」を感じさせた。
7月12日の日経新聞に「家電販売大手4社の6月の売上高が1年11ヵ月ぶりに揃って増加」という記事が出た。エアコンや冷蔵庫など白物家電の販売回復を伝えるものだった。しかしヤマダ電機は8月8日、中国の店舗閉鎖で特別損失を計上し4~6月期決算の最終損益が58億円の赤字になったと発表し、翌日、東証は朝から「特別売り気配」に指定して警戒する有様だった。
そんなヤマダ電機の巻き返しの主役として下半期、期待を集めたのが2011年に買収した木質系プレハブ住宅メーカー、ヤマダ・エスバイエルホーム<1919>を中核とする住宅事業だった。そもそも太陽光発電やオール電化などを備えた「スマートハウス」の販売促進を狙った買収だったが、2014年度に住宅関連事業の売上構成比を15%に引き上げて「第二の本業」化する方針を示し、住宅リフォーム関連売場の面積が2倍の新店舗を出店。12月には格安注文住宅を販売し年間130億円を受注する計画を明らかにし、住宅事業の顧客開拓に本腰を入れて不動産2000社と連携すると発表している。
10月15日、当初は黒字予想だった2014年3月期の最終損益が上場以来初の赤字に転落する業績見通しを発表し、11月7日に営業赤字の4~9月期決算を発表したにもかかわらず、決算説明会では山田昇社長は元気いっぱいに2014年度のV字回復、2015年度のさらなる業績拡大を強調した。その自信の源泉は住宅事業だが、本業の家電販売も営業赤字が4~6月期38億円、4~9月期が23億円と圧縮し通期の営業黒字も見えてきた。他の上位企業を見ると、ビックカメラは8月期本決算の営業利益が前期比3.2倍とV字回復し、エディオンは2014年3月期の営業利益見通しを18億円上方修正。しかしケーズHDは逆に16億円下方修正し、出遅れている。
家電量販店の業績悪化の元凶だった薄型テレビも、夏頃から販売が持ち直してきた。目玉は「4Kテレビ」で、企業のボーナスの増額や消費増税前の駆け込み需要もあって尻上がりに伸びている。しかし、店舗で商品の現物を確かめて店員の説明を聞いた後、買わずに帰ってカカクコム<2371>で値段を比較した上で楽天<4755>の「楽天市場」やアマゾンドットコムなどのネット通販サイトで安く買われてしまう「ショールーミング」という消費者行動がクローズアップされたのも2013年だった。家電量販店業界の前途にはまだまだ波高し、と言えそうだ。(編集担当:寺尾淳)