4Kテレビの普及には懐疑的な意見もあるものの、3Dテレビよりは実際に消費者の購買意欲を掻き立てているようで、8月には国内TV販売金額が25ヶ月ぶりに前年同月を上回ったことから、4Kテレビへの期待感が一気に高まった
2013年の家電の幕開けは、4Kテレビの幕開けでもあった。4Kとは、4K解像度の略語で、横4,000×縦2,000ドット前後の解像度に対応したディスプレイや映像方式の総称だ。ただし、「4Kテレビ」に限っていえば、フルHDと同じ16:9のアスペクト比で、解像度もフルHDのちょうど4倍となる3,840×2,160ドットの解像度のディスプレイが主流となっている。
2010年4月にパナソニック<6752>から2機種が発売され、その後、ソニー<6758>、シャープ<6753>、東芝<6502>、三菱電機<6503>と、国内メーカー各社がこぞって参入し、一大センセーショナルを巻き起こした3Dテレビは、結局のところ需要が伸びず、わずか2年で4Kに取って代わられることになった。日本だけでなく、世界的にも同様の流れで、毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大の国際家電見本市「International Consumer Electronics Show」(CES)でも、有名メーカー各社のブースで4Kの文字が躍り、3Dテレビは一瞬にして過去のものとなってしまった。コンテンツ不足が敗因の一つとされている3Dテレビだけに、こうなってしまうと今後もコンテンツの充実は望めないとお思われ、市場からフェードアウトしてしまうことは避けられないだろう。
4Kテレビの普及には懐疑的な意見もあるものの、3Dテレビよりは実際に消費者の購買意欲を掻き立てているようで、8月には国内TV販売金額が25ヶ月ぶりに前年同月を上回ったことから、4Kテレビへの期待感が一気に高まった。エコポイント終了と地デジ化需要の反動を受けて冷え切っていたテレビ市場が、にわかに元気を取り戻しつつあるようにもみえる。
しかしながら、問題は今後、4Kコンテンツが充実するかどうかだろう。3Dテレビでも、メガネの有無や視聴の好みなどいくつかの問題はあれど、結局のところは、3Dのコンテンツが圧倒的に不足していたことが一番の敗因だ。いくら高スペックでも、それが活かせないのであれば意味がない。2D映像しか見ないのに、高価な3Dテレビを手に入れても無用の長物だ。実際、Blu-rayで一、二度、3Dの映画を楽しんだ後は、2Dしか使っていないというような家庭も多いだろう。
4Kテレビでも同様の問題が当初から指摘されている。そもそも、4Kの映像を撮影するシステムが充分に確立されていないので、一つのコンテンツを制作するのにフルHDの数倍以上の経費がかかってしまう。撮影機材も編集機材も、ハード自体が追いついていない。また、放送するにしても、Blu-rayなどのメディアにするにしても、発信する技術もまだ開発段階だ。しかも、数年後には4Kよりもさらに高画質な8K解像度の登場が噂されている。見る方も見せる方も、わずか数年後に技術遅れになることが確定しているような商品には、なかなか触手が伸びないのではないだろうか。
ところが、メーカー側もこの状況を打開するために、発想の転換で勝負に出た。それが、今夏の商戦から登場し始めた、4Kにアップコンバートできる機能を備えたレコーダーなどである。現状のフルHDやDVDなどのSD画質の映像でも、アップコンバートすることで4K並みの高精細な画像が楽しめるという優れものだ。例えば、パナソニックの4K対応BDレコーダー「ブルーレイディーガ DMR-BZT760」やソニーのCREAS Pro for 4K搭載の「BDZ-EX3000」などがそれにあたる。純粋な4K解像度の映像とはいえないかもしれないが、それでも家庭で楽しむには充分な高画質で、しかもこれまでのDVDやフルHDがそのまま高画質になるのだから、コンテンツ不足に陥る心配はない。ユーザーにも概ね好評を得られているようだ。
2014年以降は、世界的にも4Kテレビの本格的な普及期に入ると見られているが、わが国では4月に消費税が8パーセントに、さらには15年に10パーセントに増税されることが、この市場にどのように影響するのか、現段階では判断しづらいものがある。4Kテレビの普及には期待も大きいが壁も多い。ただ、2014年上半期の消費の動向が、今後のテレビ市場の行く末を大きく左右することにはなりそうだ。(編集担当:藤原伊織)