10日発表のアメリカの12月の雇用統計は、失業率が6.7%に改善しながら非農業部門雇用者数が市場予測の4割以下の7.4万人というネガティブサプライズ。景気実態を懸念する見方もあれば大寒波の影響を挙げる見方もあり直後の為替は乱高下したが、長期金利が低下してドル安円高が1円を超えて進行した。NYダウも「7.4万人」の解釈をめぐり迷走し7ドル安だったがNASDAQは上昇した。オバマ大統領は次期FRB副議長に前イスラエル中央銀行総裁のスタンレー・フィッシャー氏の指名を発表した。週明け13日のNYダウは179ドルの大幅安。「7.4万人ショック」が尾を引いた上に今週の金融大手の決算が良くないという業績観測に、「現状のS&P500は高すぎる」というゴールドマンサックスのレポートも出てズルズル下げ続けた。サントリーHD(非上場)が買収を発表したビーム社の株価は24.6%上昇。三連休明け14日朝方の為替レートは、ドル円が一時102円台をつけて103円台前半、ユーロ円が141円近辺で、10日夕方に比べてドル円もユーロ円も2円近い円高になった。
アメリカの株安と円高で日経平均は大幅下落が予想されCME清算値は15495円。外資系証券売買動向は売り越し。254.86円安の15657.20円で始まり、値がさ株に値がつくにつれてたちまち15600円を割り込み、午前9時6分には15500円も割って15475円で下げ止まった。その後すぐに15500円台を回復し、為替がドル円103円台前半で安定したこともあり15500円台前半で「水平飛行」が続く。上海、香港市場が安く始まっても影響されず、為替と連動して底堅く小刻みに値を上げて15600円に迫り、前引けは15585円だった。
後場は前引けと同水準でスタートするが、午後1時台にじりじりと値を下げ15500円を下回り、1時45分を過ぎから急落。CME下値の15430円だけでなく一時15400円も割り込んだ。細川護熙元首相が東京都知事選への立候補を明らかにし、「脱原発」で一致する小泉純一郎元首相が細川氏と会談して「積極的に支援する」と話したことがマーケットで悪材料視され、先物主導で売られ為替も円高に振れた。ほぼ同時刻に舛添要一元厚生労働大臣も正式に出馬表明したが、2人の元首相のタッグの前にはかすんでしまった。
12月の景気ウォッチャー調査は、現状判断は2ヵ月連続上昇の+2.2でも先行判断は-0.1では「細川ショック」を癒せず、日経平均は15400円前後のもみあいが続き2時44分には15383円の安値をつけ、終値は489.66円安の15422.40円と大幅反落。日中値幅は278円もあった。TOPIXは-29.40の1269.08。売買高は30億株、売買代金は2兆8619億円と年明けから商いだけは好調が続く。
東証1部の値上がり銘柄194に対し値下がり銘柄は1537で全体の86%を占めた。33業種別騰落率は全業種マイナスで、下落幅が小さいのは空運、卸売、石油・石炭、サービス、水産・農林、食料品などディフェンシブ系。大きいのは証券、その他金融、保険、電気・ガス、その他製品、海運などだった。
日経平均採用225種でプラスは5銘柄。寄与度順に+1円の千代田化工建設<6366>以下、日揮<1963>、住友金属鉱山<5713>、NEC<6701>、NTN<6472>。マイナスは219銘柄で、マイナス寄与度は「御三家」が1~3位を占めて合計-135円だった。
メガバンクはみずほ<8411>5円安、三菱UFJ<8306>19円安、三井住友FG<8316>131円安と大幅下落。証券セクターは騰落率最下位で、野村HD<8604>は28円安と売り浴びせ。為替が大きく円高に振れ自動車は軟調。デトロイト北米国際自動車ショーでスポーツカー「FT-1」を披露してもトヨタ<7201>は146円安と3ケタ安を喫し、ボックス圏の箱男、箱から出れば真っ逆さま。アメリカでの販売車のほぼ全量を現地生産に切り替えるホンダ<7367>も同じく3ケタの150円安。前週良かったマツダ<7261>も15円安。スズキ<7269>は前場に昨年来高値を更新したが結局12円安で終えた。
電機はNECは2円高だったが、パナソニック<6752>は19円安、シャープ<6753>は15円安、ソニー<6758>は42円安とふるわない。東芝<6502>は自動車用電池の生産を2倍にする話題、英国の原発会社への出資比率を6割に引き上げる話題がありながら7円安。日立<6501>も13円安だったが、どちらも下落幅は1%台と比較的小さかった。半導体検査装置関連の山一電機<6941>は80円高、日本電子材料<6855>は100円高でともにストップ高比例配分と前週から引き続き好調。それぞれ値上がり率2位と4位に入った。同1位は35円高の漁網メーカーの日東製網<3524>で、網で魚ならぬ宇宙ゴミ(デブリ)を収集する実験を宇宙空間で始めるというSF的話題で買われていた。
科学技術には光もあれば陰もある。「脱原発」で一致する小泉元首相の支援を受け細川元首相が都知事選出馬表明。東京都が第4位株主の東京電力<9501>は直後に急落し18円安になった。「細川ショック」は、86円安で値下がり率5位の九州電力<9508>、100円安で同10位の四国電力<9507>など「原発再稼働間近」と言われてきた電力会社や、36円安で同8位の原子炉圧力容器メーカーの日本製鋼所<5631>などにも波及した。
住宅メーカーに話題があり、12月の戸建て住宅の受注が前年同月比28%減の積水ハウス<1928>は26円安、25%減の住友林業<1911>は30円安。大和ハウス工業<1925>はネット通販向けの物流施設に2000億円を投資すると報じられたが56円安。そのネット通販銘柄のヤフー<4689>は41円安で値下がり率7位。前週、提携先の新薬開発の話題で買いを集めた大日本住友製薬<4506>は利益確定売りに押されて146円安になり、値下がり率トップだった。
イオン<8267>の3~11月期決算はグループ入りしたダイエー<8263>の不振もあり営業利益4%減とふるわず57円安。この日128円安のセブン&アイHD<3382>と業績面で大きな差がついた。ガリバー<7599>は3~11月期の純利益が90%増で、42円高で値上がり率9位。前週から人気のヤマダ電機<9831>は22円高で昨年来高値を更新し同10位。ドラッグストアのコスモス薬品<3349>は営業利益13.4%増の中間決算を好感され620円高で値上がり率13位に入った。吉野家HD<9861>は56円高で昨年来高値を更新したが、カンボジア進出が報じられたワタミ<7522>は11円安だった。
サントリーHDが160億ドルでビーム社を買収しウィスキーで世界第3位になる話題にからみサントリー食品<2587>が10円高。グローバル展開に期待でき、しかも買収費用を負担するのはサントリーHDなので財務への影響はない。ビーム社の「ジム・ビーム」は200年以上の歴史があるケンタッキー・バーボンの名門ブランドで西部劇でおなじみ。
西部劇風味の無国籍映画に手を出さなかった東宝<9602>は自社株取得を発表したが44円安。同じく松竹<9601>は後場に3~11月期の決算を発表し、経常利益は前年同期比4.2倍の52.9億円に急拡大し通期見通しをほぼ達成する勢い。昨年4月に新装開場した歌舞伎座<9661>の入場者が12月には100万人突破と衰え知らずで貢献し、「こいつぁ春から縁起がいいわい」と思えばプラスは一瞬で4円安。歌舞伎座は25円高だった。
この日の主役はインフラ輸出のテーマで買われるエンジニアリング大手。日揮はシェブロンからカナダの総事業費1兆円の大型天然ガスプラントを受注したと発表し6円高。千代田化工建設は大和証券がレーティングを引き上げて39円高で昨年来高値更新。東洋エンジニアリング<6330>も6円高で、全面安の地合いの中で揃って逆行高した。日揮はアルジェリアの天然ガスプラントが武装勢力に襲われ、人質になった日本人10名が犠牲になった事件から16日で1年。その日の終値から株価は47.7%も上昇している。