交通事故の死者数が、40年間で3分の1になった理由

2014年01月31日 10:57

 警察庁によると、2013年の1年間に交通事故で亡くなった人の数(事故発生から24時間以内)は4373人で、13年連続の減少となった。

 1970年前後には1年間に1万6000人以上が命を落とし、日清戦争の戦死者数を超える勢いで死者数が増加したことから「交通戦争」とも呼ばれた。当時と今では車の普及台数が激増していることも加味すれば、40数年で死者数が3分の1まで減少したことのインパクトは大きい。なぜここまで大幅に減ったのか。

 70年代頃まで、日本の道路事情はお粗末なものだった。歩道と車道の区別はあいまいで、信号機の整備すら不十分。そのため多くの歩行者が交通事故の犠牲となっていた。歩行中の子供が車にはねられる例も多発し、新聞などが大きく報道。問題意識が国民全体に共有されていった。

 70年には内閣総理大臣を会長とする「中央交通安全対策会議」が発足。国をあげての交通ルール強化や、国民への交通安全教育が始まった。72年から74年にかけ、政府は白バイやパトカーなどの交通警察官を約9000人増員(「平成17年 警察白書」より)。今では当たり前となった歩道やガードレール、信号機や道路標識、横断歩道なども、70年代から本格的に整備され始めた。信号機の数は66年に全国で1万基しかなかったが、80年には10万1100基と、10倍に増えている。

 小中学校では交通安全教育が本格的にスタートした。子供たちには、「横断歩道を渡るときは手を上げる」といった基本的な動作が徹底して教え込まれるようになった。

 これらの国を挙げた対策の結果、交通事故の死者数は一時的な増減を繰り返しながらも、今では70年の3分の1まで減少した。

 だが、交通事故の「発生件数」や「負傷者数」を見ると、70年代当時と比べて大きく減っているわけではない。死者数だけが激減した背景には、緊急医療の高度化や、車両の安全性の向上も関係しているだろう。近年ではシートベルト着用の義務化や、チャイルドシートの使用義務化、また重大事故やひき逃げに繋がりやすい飲酒運転の取り締まり強化なども、功を奏しているとみられる。交通事故を減らすための取り組みに終わりはない。(編集担当:北条かや)