ホンダ<7267>の新SUV戦略が順調に軌道に乗ろうとしている。昨年12月に発売された新型SUV「ヴェゼル」の累計受注台数が、1月末現在、3万3,000台を超えた。この好調なスタートダッシュの理由はマーケティング戦略にありそうだ。
国内のSUV市場では、海外向けに生産してきたモデルを転用してきたため、大きさ、燃費や価格などで国内ニーズと合致せず、市場は伸び悩んできた。しかし、クロスオーバーSUVの登場を契機に国内マーケットに対応したモデルが投入され始め、SUV市場も拡大しつつある。そうした中、投入されたヴェゼルは、従来の枠に収まらない新しいタイプのクロスオーバーSUVと評価されている。
ヴェゼルのセグメントは世界的に人気が高まっているコンパクトサイズ(1.5L)で、これまでのSUVの売れ筋であるマツダ・CX-5、日産・エクストレイルやトヨタ・ハリアー(2.0L/2.5)とは競合しにくい。
デザインは、上部ボディが流麗なシルエットのクーペ風、下部ボディが従来の力強いSUV風で都会の街並みに映えるとともに、オフロードにも耐えるような力強い表情を持ち合わせている。
インテリアはパーソナルな空間を提供する大きな質の高いコンソールやフロントシートを採用している。また、スタリッシュな外観にもかかわらずリアシートと荷室は広くミニバンのように使い勝手も良いのでファミリー層にも好評のようだ。
エンジンはガソリン車のほかにハイブリッド車を用意し、消費者の省エネ志向に対応。ハイブリッド車には、新世代ハイブリッドシステムを採用し1.5Lの直噴エンジンと高出力モーターとの組み合わせで2.0Lエンジンに匹敵する高出力を実現。山間部や積雪地域などにも対応できる力強さのほか、クラス最高レベルの27㎞/Lという燃費性能も実現している。
操作性では、ホンダ独自の前輪・後輪のトルク制御を行う「リアルタイムAWD」を搭載し、電子制御のパーキングブレーキなどの最新機能も装備され、女性など操作性を求めるドライバーの運転を賢く支援する。
価格は187万円からで若い世代でも十分に手が届く設定。また、ハイブリッド仕様は219万円からで、トヨタのプリウスと同じ価格帯。手ごろなハイブリッド・セダンに満足しきれいないドライバーの取り込みを狙っている。
若い世代を中心ターゲットとして彼らのニーズを取り込み、他社との差別化を図った製品開発が実現されている。直接的にライバル車といえるものはなく、他社とは異なる市場セグメンテーションの下、ホンダは独自の市場開拓を実現しようとしており、このSUV戦略は目下のところ成功しているといっていいだろう。(編集担当:久保田雄城)