少子化対策として子育ての支援は急務。様々な所で講じられる「子育て支援」は企業のビジネスにおいても重要なキーワードだ。
哺乳びんなど育児用品のメーカー、ピジョンのグループ企業「ピジョンハーツ」はベビーシッターサービスや国際基準のプログラムを提供する幼児教室、そして商業施設などの託児施設、認可・認証保育園及び事業所等の保育施設運営など、子育て支援の事業化を明確に打ち出している。これは、子育て経験者の多くが知っている企業ブランドの価値を活かしたビジネス展開の一例だ。他にも企業ブランドの価値を活かした例として「フジテレビキッズ」が展開する事業がある。こちらもテレビ番組制作などのコンテンツ事業、”フジテレビKIDSクラブ”の運営と並び、子育て支援事業に力が注がれている。この支援事業では食育農園”ガチャピン・ムックファーム”などの「教育」、親子・家族がみんなで楽しむプロジェクトをプロデュースする「企画」、子育て関連商品の「開発」を三本柱としており、企業ブランドに加えて、開発キャラクターの知名度を上手く活かしている。
一方で、本来の商品自体がストレートに子育て支援として成立するのが住宅関連だ。
住宅メーカーは自社ブランドと得意分野の採用などを前面に出し、市場での販売強化を進める。「アイフルホーム」のブランドを持つリクシルは8月4日から働くママをターゲットにした二世帯住宅「セシボ ~ハッピーハーモニー~ ママのための、みんなの二世帯住宅」という、独立性の強い部分共有型の間取りで、時代に合った子育て支援住宅を販売している。住友林業は居住スペースにママの目線を意識し、子育てに最適な環境を提供する「ママト」を昨年発売。女性社員が中心となった開発は子育て世代の共感を集めた。アキュラホームの場合は発想も個性的だ。今年キッズデザイン賞を受賞したプロジェクト「井戸掘り大作戦~ガシャポンを現代に」において、同社の拠点などに井戸を掘り、自然水の有効活用と水資源の大切さを”水育”テーマとした活動を行った。子どもたちはこの体験を通し、環境意識や自然科学への興味が喚起された。この井戸のある住まいは同社の「ひふみ」というスマートハウスとして商品化されている。また同社は、家族が地域のコミュニティに参画し、それによって地域居住価値を高め、子育てがしやすいまちづくりに貢献する「しあわせデザインプロジェクト」で昨年も受賞しており、そのユニークな取り組みは注目を集めている。
子育て支援のための事業活動は、企業では活発であるが、肝心の日本経済回復を国民が体感できないと成長することはできない。8月10日の参院本会議で可決・成立した「子育て支援関連法」が十分に機能し、就職環境が改善されれば少しは兆しも見えると思えるのだが。