東日本大震災よって発生した福島第一原子力発電所事故から3年が経つ。経済産業省によると福島県の帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域を合わせると、約8万人がいまだ震災前の生活に戻れていない。これは企業にも大きな影響を与えおり、警戒区域内でなく、また、物理的被害がなくても、放射能に対する警戒心などから飲食店や旅館・ホテルからは客足が遠のき、売上が大幅に減少した企業は少なくないだろう。
これを受け、帝国データバンク(TDB)では「原発関連倒産」の動向調査を発表した。これは「東日本大震災関連倒産」のうち、福島第一原子力発電所事故の影響を受けた企業倒産を「原発関連倒産」と定義し、震災直後から集計を開始したもの。「原発関連倒産」には、警戒区域内企業の倒産から、放射能汚染の風評被害、原子力行政の変化により売上が大幅に減少した企業までを含み、今回調査の対象期間は2011年3月から14年2月の3年間だ。
11年3月から14年2月までの「原発関連倒産」は142件と判明した。これは「東日本大震災関連倒産」全体(1485件)の9.6%であった。震災発生後1年間では47件(構成比7.2%)であったが、12年3月から13年2月の1年間では、「東日本大震災関連倒産」全体が前年比減少となっているにもかかわらず、「原発関連倒産」は増加し、57件(同11.7%)判明した。
しかし、どこからどこまでを風評被害とするかは極めて困難である。これは、原子力損害賠償紛争解決センターにより和解仲介手続きを利用するケースもあるが、「請求額の10分1程度の和解金を得ただけで最終的に倒産した例」があるからだ。原発近県の旅館・ホテルを見れば、実際の放射線量に関わらず敬遠されたことで、売上を大幅に減少させ倒産に至った旅館・ホテル経営業者が多いとした。
もっとも、風評被害など消費マインドの低下を倒産理由としてあげている企業の内訳をみれば、もともと財務的に脆弱であったり、ほかにも倒産要因が存在する企業が多い。このため、原発事故が起こってから3年が経過する今でも、「原発関連倒産」が発生しているとした。また、原発の再稼働問題に絡み電力会社向けの案件が中止・延期となったことなどを理由とする倒産も12件判明した。再稼働問題はいまだ解決する気配がなく、原発関連事業で利益を得ていた企業にとっては厳しい状況が続くであろう。そうした状況を加味すれば、「原発関連倒産」は今後も散発するとみられると結論している。(編集担当:慶尾六郎)