ホームヘルスケア市場に活きる、日本の技術力とは

2012年08月27日 11:00

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半導体メーカー、ロームの取り組みの一例として挙げられる「ウェアラブル脈波センサ」。測定方法は、半導体技術の一つである光センシング技術を用いて「脈波」の計測を行うという。

 シード・プランニングの調査によると、2011年の生体計測機器・技術によるホームヘルスケア市場は1437億円。高齢化の進行や健康志向の高まりにより、2020年には約1.8倍の2637億円に拡大すると予測されている。この市場の拡大を後押しするのが、日本企業の培ってきた半導体での技術・ノウハウである。現在では多くの半導体企業がこの市場に参入しており、高度な微細化技術やセンシング技術などを活かした開発が実施されている。

 半導体メーカーのロームも、そんな企業の一つである。半導体メーカーとして半世紀以上にわたり培ってきた技術とノウハウを石杖に、安全・手軽で非侵襲、かつ正確に計測ができる生体センサを目指し、様々なセンサー製品の開発を実施。ひとりひとりが健康管理を行うセルフヘルスケアの時代に向けた取り組みに注力している。

 ロームの取り組みの一例として、ウェアラブル脈波センサの開発が挙げられる。ウェアラブル脈波センサの測定方法は、半導体技術の一つである光センシング技術を用いて「脈波」の計測を行うもの。この光センシング技術は、光源であるLEDを生体内に向けて照射し、生体内を透過又は反射した光を計測するものである。生体内に照射された光は皮膚・脂肪・骨・血液などにより吸収される。この内、皮膚・脂肪・骨での光吸収は一定値を示し、時系列の吸収量が変化することはないという。一方、動脈血は心臓からの拍動に伴い血流量が変化し、そこに含まれる酸素化ヘモグロビンには入射光を吸収する特性(吸光度特性)がある為、時系列に反射光量をセンシングすることにより脈波形を取得することができるのだという。

 ロームが目指す脈波センサは、日常生活中における健康分野への活用である。その為、日常活動中の脈波計測の実現と装着負荷低減に向けた技術開発として、脈波センサ専用反射型光センサの開発、体動ノイズ除去信号処理回路の考案、手首での安定した脈波計測の開発を進めており、すでにリスト型脈波センサにおいて、室内環境下の歩行動作状態で、安定した脈波計測を実現しているという。日常生活中の計測が実現すれば、従来の一回計測の<点データ>から、連続計測の<線データ>を得ることが可能になり、無線通信を組み合わせることで、スマートフォンやパソコンなどでリアルタイムに観測、早期に生体の情報変化(予兆)を捕えること可能になると期待される。さらには、エンターティメント分野への応用も見込まれ、ゲーム機や音楽機器への採用も考えられる。

 日本人の生活を支えてきた半導体技術が、今度は生命を支える技術となる。先進国に限らず、新興国に置いても市場が成熟するにつれ、健康への関心は高まるであろう。そうなった時、日本の技術力が再び世界・市場を席巻するのかもしれない。