拡大する栄養ドリンク市場の明暗とは

2012年08月27日 11:00

 富士経済の調査によると、栄養ドリンクと称される滋養強壮効果を訴求したドリンク類の市場は2010年で1148億円、2011年は前年比106%となる1217億円が見込まれており、2012年も拡大すると予想されている。この堅調な市場において、徐々に各メーカー・ブランドによって業績に差異が出てきているようである。

 大正製薬ホールディングスの第1四半期報告書によると、子会社である大正製薬が販売するドリンク剤の「リポビタンシリーズ」は、低カロリー志向に対応した「リポビタンファイン」や高価格帯の「リポビタンDスーパー」等が伸長したものの主力の「リポビタンD」が前年比5.6%減となり、シリーズ全体でも同3%減。大塚ホールディングスの子会社、大鵬薬品が販売するチオビタドリンクも2012年度の第1四半期は前年比1.3%減となっており、従来から日本に浸透してきた栄養ドリンクに勢いが見られない。

 一方で、日本国内における独占販売権を取得し5月から発売を開始した「モンスターエナジー」ブランドの展開などを図ったアサヒ飲料は、市場を大きく上回る成長となっている。その他、2005年に上陸したレッドブルを筆頭に、日本コカ・コーラが販売を開始した「バーンエナジーブースト」など、「栄養ドリンク」ではなく「エナジードリンク」と呼ばれる飲料の市場は順調に拡大しているようである。

 こうした中、ミツバチ産品をメインとした山田養蜂場も昨年から、1本でブラジル産プロポリスエキス100mgと健康と美容に欠かせないビタミンC1000mgが補給可能な商品「プロポリスドリンク プロガードC」を発売開始。養蜂専門家の視点から鮮度と品質を徹底的に追求し、プロポリス独特の風味を和らげてすっきりと飲みやすくした。素早く栄養補給できるものとして他社との差別化を図った商品を展開している。また米スターバックスも、日本での販売は未定だというが、コーヒー生豆のエキスと果汁を組み合わせた栄養炭酸飲料「スターバックス・リフレッシャーズ」の販売を一部店舗で開始したと報じられるなど、この市場はさらに群雄割拠となりつつある。

 厳密に言うと、「リポビタンシリーズ」などの栄養ドリンクと「レッドブル」などのエナジードリンクとは同一の市場ではない。前者は医薬部外品で薬事法の規制をうけるドリンク・ミニドリンク剤市場であり、後者は効能を表現できない清涼飲料・炭酸飲料市場である。しかし、利用シーンやターゲット層に差異はあるものの消費者としては同様の商品であり、選択肢として同列に並ぶものであろう。現在は苦境に立つ栄養ドリンクが盛り返すのか、エナジードリンクがこのまま市場を拡大するのか、注目が集まるところではないだろうか。