来年度より 三重県で男性不妊治療助成制度スタート

2014年03月20日 09:12

 三重県は来年度より男性不妊治療を対象とした新たな助成制度を開始すると発表した。男性不妊治療としては、同県が全国初となる。現行の国の制度としては、顕微授精や体外受精など健康保険適用外の「特定不妊治療」を受ける際、1回あたり最大15万円の補助を受けることができる。この補助の対象は年間所得が730万円未満の夫婦となっている。同県ではさらに所得が400万円未満の夫婦に対し、さらに最大10万円の助成をする予定だ。これにより最大25万の助成金を受けることが可能となる。

 「不妊」という言葉を耳にする機会は多いだろうが「女性ではなくなぜ男性が?」と疑問を持つ人もいるだろう。男性不妊は12人~15人に1人と言われており、また「無精子症」すなわち射出精液中に精子が1匹も見当たらない症状は、男性100人に対して1人の割合だ。

 男性不妊は2012年にNHKで特集に取り上げられてから、だいぶ世に認知されはじめた。しかし「まさか自分に限って」と不妊に向き合おうとしない男性も少なくない。

 晩婚化がすすんでおり、平均初産年齢が高齢化している。年齢があがるにつれ男女ともに「不妊」になる確率は大幅にアップする。それにともない「妊活」が一般的な言葉として定着し「不妊症」に対しても理解が広まりつつある。しかし不妊症は「女性側の問題」として考えている人が多く「男性不妊症」についてはまだまだ認知度が不足している。また不妊治療支援を行っているNPO法人「オハナ」(事務局・横浜市)では、「女性の不妊治療は社会的にも認知されるようになったが、男性は心理的負担から治療に取り組まない人が少なくない」といった指摘をしている。

 仁寿会リプロダクションクリニック大阪の石川医師は、男性不妊症は「先天性と後天性による原因がある」と述べている。先天的なものは遺伝子の異常、または染色体の異常が原因だと言われおり、後天的なケースは精索静脈瘤、小児期の停留精巣、思春期のおたふくかぜ等が原因であるという。原因については医師の診断となるが、夫婦として取り組めることもある。ひとつの方法として射精の頻度を上げることがあるという。不妊の患者に対して、1週間に3~4回は射精するよう指導している。精子の生存期間は短い。3日以上禁欲すると死滅精子が増加する。これは良質な精子に対してよい影響を及ぼさない。三重県の取り組みからも男性不妊治療は珍しいことがではないという意識が広まっていることがうかがえる。(編集担当:久保田雄城)