今年度の幕開けは、消費増税の話題で持ちきりだったが、そんな中、多くの企業では新入社員を迎えての入社式が行われた。式典といえば堅苦しいイメージが付きまといがちだが、昨今の入社式は企業のイメージを前面に押し出した個性的なものや、華やかなイベント的なものも多く見受けられる。また、入社式をみると、その企業の様子や状態、経営スタイルも透かし見ることができるので面白い。
今年目立った入社式としては、まずは経営再建中のシャープが創業102年目にして初めて、入社式を報道関係者に公開したことで話題を呼んだ。入社式には、昨年就任した髙橋興三社長以下9人の同社役員が出席し、94人の新入社員が参加した。式では、髙橋社長の激励の言葉のあと、出席役員と新入社員が6つのグループに分かれて、約45分間に渡る座談会行うなど、新入社員の積極性を促す姿勢が随所に見受けられ、全社一致で再建に臨む髙橋社長の意気込みが感じられる内容となっていた。
また、ANAホールディングスも、羽田空港の格納庫で約1000人の入社式を開いた。入社式では、ANAの翼として、ジャンボジェットの愛称で親しまれてきたボーイング747機が3月31日をもって全機退役したことを受け、同機体の前で行われ、演壇に立った伊東信一郎社長は「成長と飛躍の立役者だった」と同機の退役を惜しみつつも「現状に甘んじ勝負を避けていては、ほかに取って代わられる」と、新入社員を激励した。伊東社長の言葉を裏付けるかのように、新しい飛躍の年を迎えるにあたり、実に20年振りに入社時点から437人もの客室乗務員を正社員として採用している。
また、ハウスメーカーのアキュラホームでも、木造注文住宅を手掛ける企業らしく、今年度アキュラグループに入社する全55名の新入社員が大工仕事の象徴であるカンナがけを体験する、ユニークな「カンナがけ入社式」を行った。入社式では、宮沢俊哉社長が「自ら考え、自ら行動して成長していただきたい」と訓示を述べた後、宮沢社長自らがカンナがけの手本をみせ、新卒新入社員がそれにならってカンナがけを体験した。同社では妥協することなく住まう人のために精進し、努力を惜しまない心を持ち続けてほしいという思いから、2006年より毎年、入社式でカンナがけ体験を実施している。
厚生労働省の調査によると、新入社員のおよそ3割が3年以内に退職している。理由は様々だと考えられるが、理想と現実のギャップが激しかったことなどが大きく影響しているようだ。就職難の時代とはいえ、黙っていても会社に骨を埋める世代ではない。たかが入社式。されど入社式。新入社員が一堂に会する入社式だからこそ、おざなりの式典ではなく、リーダー自らが会社の方針や姿勢を明らかに示すことが必要なのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)