最先端の医療技術を福島から。日大工学部とロームが産学連携

2014年04月05日 20:37

日大シンポジウム-リサイズ

2014年4月より「センサー技術を用いた先端的医療機器開発」において共同研究を開始するローム株式会社と日本大学工学部は3月27日、産学連携を記念したシンポジウムを開催した。

 2013年9月に経済産業省が発表したレポート「経済産業省における医療機器産業政策について」によると、日本の医療機器市場は2011年に過去最大の市場規模となる約2.4兆円を記録している。医療機器市場は景気の影響を受けにくく、安定した需要がある。しかも今後、高齢化社会が加速することによる医療費の伸びが予測されており、それに伴って医療機器市場もさらに拡大する見通しだ。

 そんな医療機器市場で近年注目されている技術の一つに「ナノバイオニクス」がある。ナノバイオニクスは、その名の通り超微細ナノメートル技術「ナノテクノロジー」と生物工学「バイオテクノロジー」を融合した技術で、微少な世界で組み合わせることによって、これまでにない革新的な材料やデバイスを実現しようとするものだ。昨今の医療の現場では、疾患の治療だけでなく、予防医学やヘルスケア分野の研究も盛んに行われるようになってきた。そして、こうした最先端医療を支えているのがセンサー技術だ。電子情報技術産業協会(JEITA)も、新たな成長分野として、「ヘルスケア・メディカル」と「センサー」を挙げており、とくに日系企業が50パーセント以上のシェアを占めるセンサー分野に寄せる期待は高く、世界的な需要も20年には5兆8661億円にまで拡大するとみている。

 日本の企業の中でもナノバイオニクスの可能性に早くから注目し、医療分野へのセンサー技術開発を行ってきたのが半導体大手のロームだ。同社ではこれまでにも微量血液検査システム「バナリスト」の開発など、同社の誇るセンサー技術を利用して医療機器の開発に取り組んできたが、この度、「センサー技術を用いた先端的医療機器開発」において、日本大学工学部と共同研究を開始することを発表した。日本大学工学部は先端的医療機器を開発することを目的に2013年4月から産学連携研究室を設置して、医療機器関連企業との産学連携研究を進めているが、ロームもこれに参加する形になる。具体的には、ロームのセンサー技術を用いて、癌の非浸襲的診断法や光脳機能診断法などの医療機器の開発を目指す。

 日本大学工学部は昨年、電気電子工学科の尾股定夫教授が、指先で触れるだけで血圧が測れる世界初の血圧計を開発することに成功して話題になったばかり。欧米各国での国際医療機器展示会でもオファーが殺到するなど、世界的な注目も集まっている。また、同校では医療機器産業の活性化は、日本経済の発展だけでなく、同校の地元である福島の経済復興にも繋がるものとして目的の一つに掲げている。いまだ復興がままならない福島だが、最先端の技術がそこから発信される事は、復興の大きな力になることだろう。同校の産学連携研究室の今後の成果に期待が高まる。(編集担当:藤原伊織)