開発が進められるレアアースの代替・リサイクル技術

2012年08月20日 11:00

 資源の偏在性が高く、入手困難性の高いレアアース・レアメタル。その安定確保や依存度低下を図るため、政府による補助金等の施策もあり、企業や団体による削減・代替・リサイクル技術の開発・実証化が徐々に進められている。

 ホンダは今年4月から、日本重化学工業のプラントにおいて使用済みのハイブリッド車用ニッケル水素バッテリーからレアアースの抽出を開始。6月20日には、その抽出したレアアースの再利用を2012年中に開始すると発表した。抽出したレアアースの再利用方法については、ニッケル水素バッテリーだけでなく幅広い部品への活用を検討しているという。また、回収したニッケル水素バッテリーを解体する際にバッテリーの残留電圧を取り出し、回生電圧として解体作業などに利用することも検討しているという。さらにホンダは、使用済みニッケル水素バッテリーだけにとどまらず、使用済みのハイブリッド車用モーターやリチウムイオン電池などからもレアアースを抽出することを目指す。

 また日立製作所は、日立産機システムと共同で、モーターの心臓部である鉄心に鉄基アモルファス金属を採用することで、レアアース(ネオジウム、ディスプロシウム)を含んだ磁石を用いない、11kW高効率永久磁石同期モーターを開発。日立と日立産機は、2008年にレアアースを用いないモーターの基礎技術を確立していたが、さらなる大容量化と高効率化を図るため、構造の最適化や鉄心の損失低減などの応用技術を開発し、中型容量クラスである11kWモーターへの適用を実現している。

 さらにコニカミノルタホールディングスは今年2月、ガラス研磨材として使用される酸化セリウムのリサイクル技術の開発に成功したと発表。コニカミノルタが長年フィルム開発で培ってきた材料技術を活用し、使用済み研磨材スラリーに薬剤を加え、ガラス成分を分離、除去した上で濃縮することで、酸化セリウムの研磨材としての再利用を実現したという。リサイクルには大型設備を必要としないため、短時間、低コストでリサイクル設備の設置導入をして、再利用を進めることが可能だ。

 一方で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「希少金属代替材料開発プロジェクト」の一環として、酸化セリウムの使用量低減と代替材料の開発に取り組んでいる立命館大学・アドマテックス・クリスタル光学・九重電気と共に、複数の新たな研磨材料の開発に成功したと発表。新たに開発した研磨技術の一つは、酸化セリウム砥粒の代わりに、金属の酸化物粉を入れた酸化ジルコニウム砥粒を用いたもので、仕上がりの品質は維持したまま、ガラスを平滑化する時間が従来の2/3にできるという。もう一つの技術は、酸化セリウム砥粒の代わりに、金属塩を加えた酸化ジルコニウム砥粒を用いたもの。同じ研磨時間で、より平滑性に優れた仕上がりになるという。これら技術により、セリウムフリーでの研磨が可能となる。

 中国工業情報省が採掘・精錬事業への参入基準を初めて設けると発表、生産能力が約2割削減される見通しと報じられるなど、供給や価格の安定に対して常に不安が付きまとうレアアース・レアメタル。資源国の施策や情勢に左右されない為にも、リサイクルや代替技術の進歩は欠かせない。こうした技術が、多くのレアアース・レアメタルに広がり、一日も早く実用化されることを期待した。