安倍首相は、1月に、小中学校での道徳の教科化について「公共の精神や豊かな人間性を培うため」特別の教科として位置付けることを表明した。文部科学省の有識者会議が小中学校で正式な教科ではない「道徳」を正式な教科に格上げするよう提言していたことを受けた形だ。下村文科相は2月に中央教育審議会に諮問したものの、与党公明党の富田衆議院議員がNHKの番組で「慎重に検討してほしい」と述べるなど、内部でも議論がある模様だ。
道徳教育。文部科学省は「児童生徒が、生命を大切にする心や他人を思いやる心、善悪の判断などの規範意識等の道徳性を身に付けることは,とても重要です」とそのHPで述べている。さて、道徳とは何なのか?定義を見てみよう、人間が無意識の内に世の中に存在するものと認識している正邪・善悪の規範とされていて、善悪をわきまえて正しい行為をなすために、守り従わねばならない規範の総体とされている。つまり、何が正しいのかそうでないのか、善いのか・悪いのか、の規範ということだ。簡単に言えば、価値判断の基準ということだろう。
ただし、教科ではないものの、NHKによると小中学校では週1時間程度行われているようだ。現在使われている資料として、中学生用の「私たちの道徳」を見てみる。そうすると、自己コントロール、目標設定、自律、礼儀作法、思いやり、相手の尊重、自然保護、権利と義務、他者への配慮、世界人権宣言などの内容が入っており、学習指導要領に示す道徳の内容項目ごとに「読み物部分」と「書き込み部分」とで構成されている。先人等の名言,偉人や著名人の生き方も紹介されている。非常に素晴らしい内容だが、価値観を問われる内容ではない。
早ければ平成27年度から「教科化」が実施されるそうだが、教科書を作ることも大事だが、どのように教えるのか、そして学習意欲をどのようにしたら持ってもらえるか、子供にとってどういったメリットがあるかを設計していくべきだろう。道徳とは何か、この社会の規範としてどこまでがアウトでどこまでがセーフであるかを議論し、理解、思考できる内容にすることが問われよう。(編集担当:久保田雄城)