経済を支える物流の危機 運送業を取り巻く厳しい現状

2014年05月17日 13:55

 日本における貨物輸送の約9割はトラック輸送が占めている。ちなみに残りの1割は、船舶・鉄道・航空機などである。トラック輸送はいわば日本国内における物流の要でもあるわけだ。そんなトラック輸送に今、逆風が吹き荒れている。増税や人材不足などによって厳しい経営環境に置かれているのである。
 
 厳しい経営環境を強いられている背景には、4月からの消費税増税に加え環境税の増税も加わったダブル増税による燃料費の高騰が挙げられる。ご存知のように、消費税は8パーセントとなり燃料代に含まれる環境税は前年に比べて倍の増税(25銭から50銭)となった。運送会社各社は燃料費を削減するための対策に迫られたわけだ。燃料費の増加分を積荷に転嫁できればいいのだが、積荷の価格にしても価格競争が激しく、事はそう単純ではないのが実情なのである。さらに、追い打ちをかけるように高速道路におけるETC割引も縮小されてしまい、もはや長距離輸送全体にかかるコスト増は避けられない状態でもある。
 
 アベノミクスによる景気の底上げを受けて各運送会社に舞い込む依頼も増えている一方で、トラック輸送を担う人材の不足も深刻となっている。特に若者に不人気な職種となっており、休日が少ないことや業界全体の安定性に欠けるなどがその理由だという。そして、さらに拍車をかけたのが中型免許の登場である。現在は2t以上のトラックに乗るためには中型免許が必要になっている。以前は普通自動車免許があれば運転できたわけだが、これが人材不足に大きな影響を及ぼしている。現在のシステムでは普通自動車免許を取得してから2年経たなければ中型免許を取得できない。よほどトラックが好きでたまらないという者でもない限り、新たに教習所へ通おうとする人間はごく一握りにすぎない。つまり、普通自動車免許を取得し終わった若者にとっては、新たに中型免許を取得する必要性がないのである。若者を雇用したくても、運転する免許がなければ雇うわけにもいかないのである。
 
 こうした「重荷」を背景に、各運送会社も各々に対策を講じてはいる。なるべく高速道路を使わないように下道を利用したり、そのために通常よりも早い時間に出発したりなどしている。しかし、下道を走れば燃料を消費するしドライバーの拘束時間も長くなる。そうなると、断る依頼も増えてしまうという負のスパイラルに陥る。これは貨物輸送に限ったことではなく、ダンプカーや生コン車を必要とする建設業界にもいえる惨状である。
 
 大手の運送会社などは、中型免許を取得できるまでの2年間を人材育成に充てているところもあるが、そこまでの経費を考えるととても中小の運送会社では不可能なのである。国には一刻も早い抜本的な改善策を望みたい。(編集担当:久保田雄城)