二次創作の先にある未来 KADOKAWAとドワンゴ提携の意味

2014年05月25日 20:32

 5月14日、角川書店などで知られる大手出版社KADOKAWA<9477>と「ニコニコ動画」で有名なネット企業ドワンゴ<3715>の経営統合が発表された。新会社名は「KADOKAWA・DWANGO」。10月1日の設立が予定され、新会社会長にはドワンゴの川上量生会長が就任する。

 この統合はアニメ・コミックといった日本のサブカルチャーの更なる発展が期待できるという面でも非常に大きな意味があるだろう。両社が行ってきた事業と、それが日本のサブカルチャーに与えた影響から、今後の展開を予測していきたい。

 統合記者会見で川上会長は「ドワンゴがやってきたことはネット世界でのプラットフォーム。KADOKAWAがやってきたことはコンテンツ。その印象から、お互いを囲い込むための統合と思われるかもしれないが、やりたいことはそれではなく、プラットフォームとコンテンツの融合。そうして新しいものを作る」といった主旨の発言をしている。ここに統合の本質があるのではないだろうか。

 ドワンゴの「ネット世界のプラットフォーム」とは、「ニコニコ動画」に代表される参加型のプラットフォームだ。ここでは人気のアニメやゲームといったコンテンツを使い、みんながそれを元ネタにした動画を楽しんできた。「あの作品がもしもこうだったら面白いよね?」という二次創作の楽しみをネット上で共有できるようにしたのが「ニコニコ動画」ヒットの最大の理由だろう。

 「ニコニコ動画」が爆発的に広がり始めた08年頃、大手出版社は使用されるコンテンツの著作権上の問題から、そのプラットフォームに対し見て見ぬ振りをしてきた。しかしその中でいち早く、二次創作から生まれる新たなマーケットとクリエイターの発掘に反応したのがKADOKAWAだった。

 11年にはKADOKAWA(当時角川グループホールディングス)とドワンゴによる「ニコニコ静画」を発表。これは「ニコニコ動画」同様に同時的なコメントが可能な電子書籍だった。「ニコニコ静画」発表に際し、川上氏は「コンテンツが引用されコメントが付くことで情報は新しくなる。初音ミク関連のコンテンツが拡散し続けるのも二次創作が繰り返されるから。二次創作がコンテンツの寿命を伸ばす」と発言している。

 この時の発言は、先日の統合会見での「プラットフォームとコンテンツの融合」という言葉と地続きになっていると考えられるだろう。プラットフォームの中で消費されるコンテンツではなく、プラットフォームとコンテンツがお互いを更に拡散させる装置となる未来を両社は作ろうとしているのではないだろうか。

 そしてそこには、二次創作が初音ミクのムーブメントを作ったように、企業主体ではなくユーザーと一体となったエンターテイメントが必要だろう。両社の統合が日本のサブカルチャーをもう一歩進める未来に期待したい。(編集担当:久保田雄城)