インターネット選挙運動にむけたIT関連ビジネスにチャンス

2013年05月12日 18:49

 4月27日・28日、千葉市の幕張メッセで開かれたイベント「ニコニコ超会議2」には、来る参議院戦を意識してか、自民、民主、日本維新の会、共産の4党がブースを初出展した。インターネットを使った選挙運動が、今夏に行われる参院選から解禁されることが決まったこともあり、各党党首が登場するなど、会場は大いに盛り上がった。自民党の安倍晋三首相(党総裁)は党の街宣車に乗り込み、「必ず強い経済を取り戻す」といった党のアピールに加え、「共にネットを活用し、日本を変えていこう」と、インターネットを利用する浮遊層への支持を訴えかけた。

 なお、「ニコニコ超会議2」とは、人気動画サイト「ニコニコ動画」を地上に再現するイベントである。「ニコニコ動画」はオンラインゲームなどでも知られるIT関連企業ドワンゴが運営しているが、すでにIT業界では、「インターネット選挙運動」が大きなビジネス・チャンスになると、新規事業の展開、ネット選挙運動イベントの開催ほか、関連ビジネスを本格化させつつある。「ニコニコ動画」においても、過去政治家が出演した番組が人気を集めており、ドワンゴ側としてはネット選挙を盛り上げることで、さらなる会員獲得を期待している。また、ネット調査会社のマクロミルは、政党向けの調査事業を検討。ネット広告のアイレップは、サイトの構築を技術的に工夫することで、検索サイトの上位に公式ページが現れやすくなる「検索エンジン最適化(SEO)」サービスを、政党や候補者に売り込むという。ほかにはガイアックスが企業・官公庁向けに支援サービスを提供してきた実績を生かし、選挙運動をソーシャルメディア活用やリスク対策の面から支援するサービスの提供を開始している。

 とはいえ、選挙戦が過熱することで、検索結果をゆがめるようなネガティブキャンペーンを持ち掛けるSEO業者が現れる可能性も指摘されている。また、日本維新の会共同代表・大阪市長の橋下徹氏は「ネットを有効活用できる政党は少ない。(他の)政党はネットに弱く、広告代理店の餌食になる」との見解を示したと同時に、「代理店からの提案で、有権者の意識を方向付けることは、すぐにはできない」「政党が発信する情報より、有権者間の情報でできる流れが選挙におけるネットの役割」との持論を述べた。

 なお、イベントに先がけ「Ameba」(サイバーエージェント)がユーザーに「ネット選挙運動についての」アンケート調査(2月28日~3月4日に実施。有効回答数は1万6142件)を行ったところ、「解禁によってネットユーザーの政治への関心・理解度が高まるのでは」と回答した人は全体の7割を超えた。さらに昨年12月の衆院選で未投票だったユーザーの約6割が「(解禁で)政党や候補者への関心や理解度が高まれば投票に行く」と応えている。

 初めての試みであるかゆえ、まだ明確な見通しは立っていないが、このような結果を見る限り、インターネットによる選挙運動は、間違いなく新たなITビジネスの起爆剤にはなりそうだ。(編集担当:吉岡里美)