今年度新たに国土交通省により事業化された「地域型住宅ブランド化事業」とは一体どのようなものだろうか。
以前より、地方自治体や様々な住宅関連の団体の単位でも盛んに事業化や制度化されてきた木造住宅の建設促進や地域材の利用拡大を図るための施策。例えば千葉県では「地域材(ちばの木)活用促進支援事業」を設けているが、これは県産木材の需要を拡大させ、林業の再生と地域の雇用を拡大し、経済の活性化を図る目的で、新築及びリフォーム住宅への補助金を交付しているものだ。このような施策は日本全国に数多く存在する。
国の政策としても国土交通省が様々な事業を展開してきたが、比較的知られているものとしては「長期優良住宅」への優遇措置制度がある。高性能で長持ちする住宅に税制優遇や補助金の導入を行い、普及促進に努めてきた。しかし、今年度からその内容が大きく変更され、同時に名称も「木のいえ整備促進事業」から「地域型住宅ブランド化事業」と改められ、先日その採択グループの発表が行われた。
その事業での大きな変更点としてまず挙げられるのが、工務店単独での申請がなくなり、あくまでも”原木供給”"建材流通”"設計”"施工”など6つ以上の業種から構成されるグループとして応募しなければならなくなったことだ。また、対象住宅として認定されるには、地域材等を活用する木造住宅であることや、他にも細かい要件を満たさなければならない。
要件を満たすハードルは高そうではあるが、年間新築住宅供給戸数が54戸以下であるという条件は、大手住宅メーカーとの厳しい市場争いに晒されている地域工務店では歓迎される傾向も見られる。
例えば、愛知県岡崎市を中心に住宅建築を行うオカザキホームが代表を務めるグループ「東海家守りネットワーク」も採択されたグループのひとつ。今回は、東海エリアの特徴を踏まえ、夏の日差しに強く、地域の街並みづくりに貢献し、防犯性が高く、地域材を使った耐久性の高い家づくりをコンセプトとした「集いの家」の内容が評価された。34社で構成された同グループは、そのメリットを工務店同士のバックアップを強固にし、長期的な維持管理を可能とした体制づくりを行い、全体の知識習得・技術向上を目的とした勉強会なども実施できることとしている。
「地域型住宅ブランド化事業」は、多数の企業を取りまとめていく煩わしさもあると思われるが、地域材を活用できることで、その経済効果が上がれば、注目度も高まり、住宅市場全体にも良い影響を与えてくれそうだ。同様の事業として、居住エネルギー関連の補助金は、住宅全体の金額が上がってしまうという批判の声も一方ではあり、補助金制度そのものも国民の厳しい目が向けられている。だからこそ関係者は、今回の「地域型住宅ブランド化事業」にも投入される補助金の総額(1回目)約55億円という金額は、国民の税金であるということを忘れてはいけない。